改正国際保健規則のもとWHOへの届出が必要な4疾患の症例定義
(Vol. 30 p. 136: 2009年5月号)

WHOは、改正国際保健規則(International Health Regulations; IHR)のもと、その発生が異常あるいは予期できないものであり、重大な公衆衛生上のインパクトを有すると常に見なされ、あらゆる状況下でWHOへの報告が必須である、新型インフルエンザ、SARS、野生株ポリオウイルスによるポリオ、天然痘の4疾患の症例定義を定めた。

新しい亜型によるヒトインフルエンザ
パンデミックの危険性のあるインフルエンザA型ウイルスに最近感染したと検査確定されたヒト症例を報告する。発症の証拠は必要ない。

最近の感染はPCR、ウイルス分離、ペア血清による抗体検査によって判断する。1回の血清抗体のみの場合は、参考情報を用いてWHOの症例定義に対するヒト感染の可能性を評価する必要がある。

野生株ポリオウイルスによるポリオ
疑い症例、または疑い症例と濃厚接触のあった人から採取された便から野生株ポリオウイルスが分離された者を疑い症例として報告する。

疑い症例の定義は15歳未満で急性弛緩性麻痺を呈する者、またはポリオが疑われている場合は全年齢で弛緩性疾患を呈する者とする。

また、野生株ポリオウイルスまたはワクチン株由来ポリオウイルスが弛緩性麻痺を呈していない人または環境検体から分離された場合も、“国際的な懸念を有する公衆衛生上の緊急事態と相当し得る事象”として報告する。

重症急性呼吸器症候群(SARS)
流行期以降の期間においては、以下に示す臨床症例定義を満たす者、または生きたSARSコロナウイルス(SARS-CoV)を扱う研究室で働く者、もしくはSARS-CoVに感染した臨床検体を保管する者で、かつSARS-CoVの感染が以下に示す検査診断によって確定された症例を報告する。

臨床定義:以下の(1)〜(4)すべてを満たすもの:
(1)発熱、(2) 1つ以上の下気道症状、(3) 肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の肺浸潤影と矛盾しない放射線学的所見、または明らかな他の原因がなく肺炎、ARDSの病理所見と矛盾しない病理解剖所見、(4) SARSのほかに病態を十分に説明できる診断がない。

確定診断に必要な検査診断:
a)RT-PCR、リアルタイムRT-PCRによるウイルスRNAの検出:(1)少なくとも2カ所の異なる部位からの臨床検体(例えば鼻咽頭と便)、または(2)2回以上同じ部位からの臨床検体の採取、または(3)臨床検体を2つの異なる分析方法で検査、もしくは反復してRT-PCRやリアルタイムRT-PCRを実施、または(4)臨床検体からのウイルス分離。

b)酵素免疫測定法(ELISA)または免疫抗体法(IFA)による血清抗体の検出:急性期および回復期血清を同時に測定し、(1)抗体陽転、または(2)4倍以上の力価の上昇。

天然痘
以下に示す定義を満たしたものを天然痘確定症例として報告する。

確定症例の定義:急激な発熱(38.3℃以上)、倦怠感、頭痛・背部痛を伴った重症の衰弱にて発症を認め、その2〜4日後に顔面、前腕から始まり体幹部、脚に広がる斑状丘疹が出現する。かつ48時間以内に深在性で硬く丸い限局性の小水疱となり後に膿疱を呈する。かつ体の部位ごとに存在する病斑が同一ステージで進行する。かつ天然痘の他に病態を説明できる診断がない。かつ検査診断により確定。

(WHO, WER,84, No.7, 52-56, 2009)

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