栃木県内における給食を介したノロウイルスによる食中毒事例
(Vol. 29 p. 104-105: 2008年4月号)

栃木県県北健康福祉センター管内で給食を介したノロウイルス(NV)による大規模食中毒事例(患者数117名)が発生したのでその概要を報告する。

2007年12月28日N町I小学校から、児童、教職員二十数名が26日〜27日にかけて下痢、嘔吐等の症状を呈している旨、県北健康福祉センターに連絡が入った。県北健康福祉センターが調査したところ、N小学校とN中学校にも同様の症状を呈する学童・生徒が多数存在することが明らかになった。

患者発生は3校とも26日〜27日に集中しており、学校給食は単独調理で、共通食はパンと25日のケーキ(N洋菓子店)であった。パンは34校に納入されたが、他校では患者の発生がないこと、ケーキは同日に上記3校のほか1校に納入されたが、製造工程・製造日等が異なっていた。また、パンも共通していたが有意な患者発生は認められなかったことなどから、ケーキを原因食品とする食中毒事件と断定した。

3校の発症者23名(I小学校調理員を含む)および洋菓子店従業員3名の糞便計26件、25日のI小学校の保存食5件(パン、タンドリーチキン、サラダ、野菜スープ、生クリームバナナケーキ)およびN中学校の保存食2件(生クリームバナナケーキ、チョコクリームバナナケーキ)の食品計7件について、リアルタイムPCR法にてNV遺伝子の検出を行った。その結果、発症者23名中22名(I小学校調理員を含む)、従業員3名中3名の糞便およびサラダからNV genogroup(G) II型遺伝子が検出された。さらにこれらの検体について、プライマーG2-SKF/G2-SKRを用いRT-PCRを行い、得られた増幅産物のダイレクトシークエンスおよび系統樹解析を行った結果、26検体はすべてGII/4に分類され、サラダと発症者1名を除いた24検体で遺伝子塩基配列が一致した。また、今回検出されたNVは、昨シーズンの栃木県内流行株と同じクラスターに属することもわかった()。なお、聞き取り調査において、N洋菓子店の従業員3名には、本事例発生前後において、嘔吐・下痢などの胃腸炎症状は見られなかった。I小学校調理員は原因と推定されたケーキを喫食したが、N洋菓子店従業員3名は喫食していない。

NVは環境中で比較的安定かつ感染力が強く、最近では人−人あるいは人−食品を介した感染事例が多いことが推定されている。また、感染症発生動向調査によれば、感染性胃腸炎の流行期(秋〜冬)には、本県のみならず全国で少なからずNVが検出されている。したがって、感染性胃腸炎流行期におけるNVの集団発生を防止するには、調理施設の衛生対策や調理従事者の健康管理・感染予防にさらに留意することが必要であろう。本県の感染性胃腸炎患者は昨シーズンと同様に12月以降増加しており、現在(第7週2/11-2/17)でも定点当たり7人を超えた状態が続いているので、今後のNVの動向には注意が必要であると思われる。

栃木県保健環境センター 大金映子 平田明日美 舩渡川圭次
県北健康福祉センター 小林清美 佐藤孝男
国立感染症研究所感染症情報センター第六室 木村博一

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る