WHO/UNICEFの報告にもとづく世界における麻疹コントロールと死亡率減少の進歩、2000〜2006年
(Vol. 29 p. 108-108: 2008年4月号)

麻疹による死亡の推定は、1999年の873,000人から2005年の345,000人まで、すなわち約60%減少したと、2007年1月に報告された。2005年のWHO総会の際、麻疹死亡を2010年までに2000年と比較して90%減少させることがさらなる目標として設定されている。ここでは47の重点対策国に対して、(1)定期のワクチン接種により、各地域の生後12カ月までの全小児の90%以上をカバーし、これを維持すること、(2)(周期的な)補足的ワクチン接種活動も含めて、全児童の2回目の麻疹ワクチン接種を確実に行うこと、(3) 検査診断も可能なサーベイランスおよびワクチン接種率のモニタリングを実施すること、(4)適切な臨床的管理を提供すること、の4項目をあげている。

これまでのワクチン接種活動に関しては、2006年の時点で1回の定期的な麻疹ワクチン接種率は80%に達し、最大の改善はWHOアフリカ地域で認められた。

一方、2,620万人の乳児が1回の定期的な麻疹ワクチン接種を生後12カ月までに受けられず、このうち61%がインド、ナイジェリア、中国、インドネシア、エチオピアに居住していた。2000〜2006年までで、47の重点対策国において、9カ月〜14歳までの約4億7,800万人が補足的ワクチン接種活動により麻疹ワクチンを受けた。また2006年には、193カ国のWHOのメンバー国中146カ国(76%)が、全数把握サーベイランスを実施していた。

報告患者数は、世界的にみると2000年から2006年で56%減少したが、WHOヨーロッパ地域では逆に上昇し、これはルーマニアやウクライナでの大規模な発生を反映している。加えて、東南アジア地域での報告症例数は2000年の78,574人から2006年の94,562に上昇したが、これは基本的にインドとインドネシアでの麻疹サーベイランスの改善を反映していると考えられる。

検査体制に関しては、WHOの麻疹風疹検査ネットワークは1998年に40カ所余りの研究所であったが、2006年には678カ所の国と地域の検査機関へと拡大した。

麻疹死亡率は、2000〜2006年にかけて全体で68%減少し、特にWHOアフリカ地域では91%と、最大の減少をみた。一方で、南西アジア地域での減少はわずかであり、これは大規模な補足的ワクチン接種活動が開始されず、定期的な麻疹ワクチン接種率の改善もほとんど無いことに起因する。死亡率減少への鍵として、子ども達を麻疹から守ろうとする保護者の意識の向上、各国政府による各レベルにおけるワクチン供給の実施、2001年に組織された麻疹イニシアチブによる援助があり、麻疹による負荷が大きい主に東南アジア諸国への援助を拡大させつつある。

今後は、インドやパキスタンなど、麻疹の負荷が大きい国での対策を強化し、麻疹による死亡を減少させ、定期的な補足的ワクチン接種を実施し、サーベイランスシステムとして、臨床検体の検査を麻疹および風疹のネットワークにおいて強化する必要がある。さらに、すべての麻疹患児の臨床管理に、ビタミンA投与を含めるべきである。

(WHO、WER、82、No.48、418-424、2007)

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