滋賀県内における飲食店を介したノロウイルスによる食中毒事例
(Vol. 29 p. 14-15: 2008年1月号)

滋賀県大津保健所管内で飲食店を介したノロウイルス(NV)による食中毒事例が発生し、今シーズン初のNVを原因とする集団発生となったのでその概要について報告する。

2007(平成19)年10月22日にR町住人から、10月17日の夜に大津市内の飲食店で会食した者のうち十数名が、10月19日から下痢、嘔吐等を訴えている旨、大津保健所に連絡が入った。大津保健所が調査したところ、10月17日にこの飲食店を利用した当該グループと、他のグループでも同様の症状を訴えていたことが判明した。

これら発症者に共通する食事が当該飲食店における食事のみであり、症状は同様であること、診察医師から食中毒の届出があったことから、大津保健所は食事を提供した飲食店を原因施設とする食中毒事件と断定した。

大津保健所の調査から、2グループの喫食者は合計36名で、そのうち発症者は22名、発症率は66.1%であった。聞き取り調査で詳細な情報が得られた発症者18名の発症までの潜伏時間は32〜68時間(平均46.1時間)であった。主な症状は、嘔気(83%)、倦怠感(72%)、悪寒(67%)、下痢(61%)、嘔吐(50%)、頭痛(50%)、発熱(44%、微熱〜38.7℃)、胃痛または腹痛(39%)および関節痛 (11%)であった。

2グループの発症者17名および飲食店従業員41名の糞便合計58検体について、リアルタイムPCR法(平成15年11月5日付・食安監発第1105001号「ノロウイルスの検出法について」)にてNV遺伝子の検出を行った。その結果、発症者17名中16名および従業員41名中1名の糞便からNV genogroup(G)II遺伝子が検出された。このうちNV遺伝子が十分量得られた発症者由来の5検体について、COG2F/G2-SKR増幅領域についてダイレクトシークエンスを行った。その結果、5検体はいずれも遺伝子配列が一致しGII/3に分類された。DDBJにおけるBLAST検索ではaccession No.DQ372862 NV/GII/Yamaguchi18/2004/JPに最も近縁であった。

また、ウイルス排泄の経過を見る目的で、2週間後に採取された発症者4名の糞便を検査したが、NV遺伝子は検出されなかった。

2006/07シーズンは、全国的にGII/4を主流とした施設内集団感染、食中毒などの集団発生の報告が例年に比べ多かった(IASR 28: 277-278, 2007参照)。滋賀県においても、同様にGII/4 による集団発生が多発した。今回検出されたGII/3は昨シーズンには検出されていなかった。

滋賀県感染症発生動向調査における定点当たりの感染性胃腸炎患者数は、今回の事件が発生した2007年第42週は4.63人/定点であったが、第47週現在6.63人/定点と増加してきており、今後の動向が注目される。

滋賀県衛生科学センター
大内好美 田中千香子 松本文美絵 南 祐一 吉田とも江 川添正幸 林 賢一 大佛正隆
滋賀県大津保健所
並河孝至 井上 敏 大橋久治 勝山和明

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