オーストラリアにおけるLeptospira weilii serovar Topaz感染の疫学
(Vol. 29 p. 23-24: 2008年1月号)

オーストラリアにおけるレプトスピラ症は、サーベイランスによる届出が始まった1991年以降2005年までに7,629例が報告され、そのほとんどは東海岸に位置するQueensland州からの報告である。国内で同定されている23の血清型のうち、Leptospira weilii serovar (sv.) Topazは、1994年に州北部Topazで初めて同定された血清型であり、これまでに26例[ヒト24、動物2(ウシ1、バンディクート1)]が報告されている。ヒトへのsv. Topaz感染は、1994年以降、1997年と2003年を除いて毎年報告され、1999年、2005年、2006年(8月まで)には各4例が報告されている。患者のほとんどは1〜6月に発生し、性比は11:1(男:女)、年齢分布は14〜64歳(中央値33歳)、主な臨床症状は発熱、頭痛、関節痛、発汗、悪寒、筋痛などで、いずれも国内で報告される他の血清型のレプトスピラ症の疫学的特徴と同様である。患者には、バナナ農家、酪農、牧畜従事者や、旅行者・ツアーオペレーターなどがおり、感染前にネズミ、ウシ、イヌ、ブタなどの動物との接触歴を持つものが多かった。患者の発生は、オーストラリア北東部に位置するQueensland州の北部(20例)と、Queensland州の南部(4例)およびQueensland州の南に隣接するNew South Wales州北部(1例)の東海岸に面した二つの地域に限られていたが、2005年に初めて西海岸に面したWestern Australia州から1例報告された。

26例中15例(ヒト13、動物2)から菌が分離され、残り11例は顕微鏡下凝集試験(microscopic agglutination test:MAT)により診断された。分離された15株を蛍光増幅フラグメント長多型(fluorescent amplified fragment length polymorphism)法により分子疫学的に解析した結果、バンディクートから分離された株およびウシから分離された株が、それぞれヒトから分離された1株ずつと高い相同性を示すことが分かった。

Queensland州で1996年〜2006年8月までに報告されたレプトスピラ症1,288例のうち、sv. Topaz感染が占める割合はわずか1.9%にすぎない。しかし、この血清型が現在の診断法であるMATのパネル血清により同定が可能となったのは2000年以降であるため、報告数は過小評価されているものと思われる。

(Australia Communicable Diseases Intelligence, 31, No.2, 2007)

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