2007/08シーズンのインフルエンザウイルスAH1亜型の分離―神奈川県

(Vol. 28 p. 351-352: 2007年12月号)

神奈川県域(横浜市、川崎市を除く)では、2007年第38週(9/17〜9/23)からインフルエンザ患者報告があがるようになり、第43週(10/22〜10/28)の定点当たり報告数は0.57と、過去5年間で最も早い立ち上がりとなっている(図1)。病原体定点(横須賀市と相模原市を除く神奈川県域)からは、第39週(9/24〜9/30)〜第44週(10/29〜11/4)の間に7検体が搬入されており、そのうち2検体からインフルエンザウイルスAH1亜型が分離されている。また、集団かぜも4件発生しており、ウイルス分離を実施中である。

初発患者は19歳男性で第39週に、2例目は3歳女児で第41週(10/8〜10/14)に、同じ医療機関(病原体定点)を受診している。受診時に採取された鼻咽頭材料について、MDCK細胞およびCaCo-2細胞を用いてウイルス分離を実施した。分離ウイルスは、国立感染症研究所から配布された2007/08シーズンインフルエンザウイルス同定用キットおよび0.75%モルモット赤血球を用いて同定した。その結果、2株ともに抗A/Solomon Islands/3/2006(ホモ価320)に対してHI価80、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(同640)、抗B/Malaysia/2506/2004(同640)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002(同640)に対しては<10を示し、AH1亜型と同定された。

集団かぜは、第42週(10/15〜10/21)に相模原市で発生したのが神奈川県域初発である。以後、第43週に厚木地域、第44週に藤沢市と鎌倉地域で発生報告があり、いずれも小学校低学年における発生であった。これら4集団18名のうがい液についてMDCK細胞およびCaCo-2細胞を用いてウイルス分離を実施しており、そのうち初発集団の1名からインフルエンザウイルスAH1亜型が分離された。分離ウイルスは、抗A/Solomon Islands/3/2006(ホモ価320)に対してHI価80、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(同640)、抗B/Malaysia/2506/2004(同640)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002(同640)に対しては<10を示した。なお、他の17検体については、継代培養中である。

神奈川県域で分離されているインフルエンザウイルスAH1亜型の抗原性は、本シーズンのワクチン株であるA/Solomon Islands/3/2006のホモ価に対してHI価で4倍の差がみられた。今後の発生動向に注意する必要があると考える。

神奈川県衛生研究所微生物部 渡邉寿美 齋藤隆行 近藤真規子 佐野貴子 尾上洋一
神奈川県感染症情報センター 近内美乃里

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