2006/07シーズン夏季のインフルエンザ流行−沖縄県

(Vol. 28 p. 322-323: 2007年11月号)

沖縄県では、2004/05シーズン5〜7月に、この時期には異例のインフルエンザの流行を初めて経験した(IASR 26: 243-244, 2005)。翌2005/06シーズンにも6〜8月にインフルエンザが流行し、患者のピークは冬季を上回った(IASR 27: 304-305, 2006)。さらに、2006/07シーズンも、過去2シーズンと同様、夏季にインフルエンザが流行し、通年でインフルエンザが発生する様相も観察されたので報告する。

患者発生状況:本県のインフルエンザの患者数は、県内58のインフルエンザ定点医療機関(小児科34、内科24)から週単位の報告により把握されている。2006/07シーズンの定点当たり週別患者数は、2007年第3週(1/15〜1/21)に1.0人を超えて増加が始まり、第11週(3/12〜3/18)に53.2人でピークとなった。その後、第18週(4/30〜5/6)に9.4人まで減少したが、第19〜24週(5/7〜6/17)は6.9〜7.9人で推移し、第25週(6/18〜6/24)に再び10.0人を超え、第30週(7/23〜7/29)まで10.1〜13.7人で推移した。第31週(7/30〜8/5)にようやく10.0人を下回ったが、終息することなく継続して4.4〜6.6人で推移している(図1)。患者の年齢別発生割合を1〜4月と5〜8月に分けて比較してみると、5〜9歳の年齢群は15.7%から28.2%に増加し、他の年齢群に比べて顕著であった(図2)。今回の夏季流行で県内の学校等における学級閉鎖の情報はなかった。

ウイルス分離状況:病原体定点等の医療機関で患者から採取された咽頭ぬぐい液を検査材料とし、MDCK細胞を用いてウイルス分離を行った。分離されたウイルス株は、国立感染症研究所から配布された2006/07シーズンキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%モルモット赤血球を使用)により型別同定および抗原解析を行った。

2006/07シーズンの最初のウイルス分離例は、2006年11月に海外渡航歴のある患者からAH3亜型が1例分離された。2007年1〜3月の流行時はAH3亜型が22例、B型が1例分離され、流行株はAH3亜型が主流であった。しかし、5〜6月は、AH3亜型が2例、B型が9例、AH1亜型が2例分離され、混合流行となり、7月はAH1亜型のみが8例分離された(図3)。

抗原解析の結果、AH1亜型分離株は抗A/New Caledonia/20/99(ホモ価640)に対してHI価10〜40、AH3亜型分離株は、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(同640)に対し40〜640を示した。B型分離株は、抗B/Malaysia/2506/2004(同320)に対し80〜320を示した。

まとめ: 2006/07シーズンの夏季にもインフルエンザの流行が観察され、夏季のインフルエンザ流行は3年連続となった。このことから、本県に夏季のインフルエンザ流行が定着したことが示唆された。

これまでに分離された夏季流行株は、2004/05シーズンには同シーズンの冬季流行株と同型のAH3亜型、2005/06シーズンと2006/07シーズンには同シーズンの冬季流行株AH3亜型とは異なるAH1亜型、B型が分離された。このように、各シーズンの冬季と夏季とでは流行株の型が同一の場合と異なる場合があり、AH3亜型、AH1亜型、B型のいずれの型も夏季に流行することが明らかになった。また、夏季流行株は次期シーズン冬季の流行株の主流となる可能性もあり、この時期のサーベイランスは重要と思われる。2006/07シーズンは過去2シーズンとも異なり、患者数は定点当たり10.0を下回った後も4.4〜6.6人で推移し、終息することなく次期シーズンを迎えていることから、今後注視していく必要がある。

沖縄県衛生環境研究所
平良勝也 岡野 祥 仁平 稔 糸数清正 久高 潤 中村正治
沖縄県感染症情報センター 古謝由紀子
沖縄県福祉保健部健康増進課 石川裕一 糸数 公

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