ノロウイルスの米国における状況、2006〜2007年

(Vol.28 p 302-302:2007年10月号)

2006年末に、CDCは米国における多くの州公衆衛生部局に、特に長期療養施設での人→人への感染を含む、急性胃腸炎集団発生数の増加に関する情報を求め始めた。米国では食中毒が疑われない限り、ノロウイルスが原因であるものを含めて急性胃腸炎集団発生に関する全国的なサーベイランスシステムはない。よってCDCは以下の情報、1)最近の急性胃腸炎集団発生の増加についてCDCと情報交換を行った3州(ノースカロライナ、ウィスコンシンおよびニューヨーク)に関する詳細なデータ(本訳においては割愛)、2)マサチューセッツ州ボストンの救急外来における症候群サーベイランスデータ(本訳においては割愛)、3)各州保健部局に対するCDC調査による急性胃腸炎集団発生に関する基本的疫学データ、4)CDCの検査室データ、を分析して、より正確に急性胃腸炎の発生を特徴づけようと試みた。これらのデータより、ノロウイルスによる急性胃腸炎集団発生の頻度が全国的に増加していることが示唆された。これは、2006年には全国で新しい2つのGII/4ノロウイルス株が出現したことによると思われた。今後、人→人への感染を含めた全国の集団発生サーベイランスの改善、すなわち利用しやすく、購入しやすく、迅速な臨床検査の開発や、CDCのウイルス株シークエンスデータベースへのアクセスの増加によって、ノロウイルスに関するより正確な罹患や死亡の評価や、新しいノロウイルス株の出現に対しても、より迅速な同定ができるようになるであろう。

発生状況:CDCは全50州とコロンビア特別区の健康部局に、1)2005年10〜12月、および2006年10〜12月のそれぞれの期間に報告された急性胃腸炎集団発生数、2)長期療養施設での急性胃腸炎集団発生数、3)PCRで同定されたノロウイルス集団発生数、に関する情報提供を求めた。報告のあった40州のうち、2005年と2006年の両年に5例以上の急性胃腸炎集団発生があった24の州のデータをまとめた。2006年10〜12月までに、この24州から1,316件の急性胃腸炎集団発生が報告され、平均50%が長期療養施設で起きており、平均26%がRT-PCR検査でノロウイルスと同定されていた。22の州(92%)で、2005年の同時期と比較して集団発生数は増加していた(増加率の幅:18%〜 800%)。

CDC検査室サーベイランス:2006年、CDCのNational Calicivirus Laboratoryは、米国の126の急性胃腸炎集団発生から761の便検体に対してRT-PCRによるノロウイルス検査を行った。集団発生の起こった状況としては、クルーズ船観光(n=37)、長期療養および関連居住施設(n=37)、レストラン等(n=13)、病院あるいはヘルスケア施設(n=7)、大学あるいは学校(n=3)、パーティー(n=3)、その他(n=26)となっている。これらの集団発生のうち、114件(90%)でノロウイルスが同定され、うち87件(76%)が部分的構造蛋白領域のシークエンスにより、2つの新しいGII/4ノロウイルス変異株(Minerva およびLaurens)に関連していることが示された。Minerva株は、2006年10〜12月の、クルーズ船および8つの州での25件の集団発生のうち15件(60%)から、2007年1〜6月の、クルーズ船および19州での 122件の集団発生のうち66件(54%)から検出された。Laurens株は、2006年10〜12月の25件の集団発生のうち10件(40%)から、2007年1〜6月の 122件の集団発生のうち33件(27%)から検出された。Minerva株とLaurens株の部分的構造蛋白領域のシークエンスは2006年にヨーロッパで報告された複数のGII/4株(GII/4-2006aおよびGII/4-2006b)と同一であった。

(CDC, MMWR, 56, No.33, 842-846, 2007)

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