分離インフルエンザウイルスにおけるノイラミニダーゼ阻害薬耐性のモニタリング、2003〜2006インフルエンザシーズン−日本

(Vol.28 p 171-172:2007年6月号)

2003/04インフルエンザシーズン以来、1人当たりのノイラミニダーゼ阻害薬オセルタミビル使用量が最も多いのは日本であった。抗ウイルス薬への耐性頻度を推定するために、地方衛生研究所からWHOレファレンスセンターである国立感染症研究所へ無作為に提出されたインフルエンザウイルスに対してオセルタミビル感受性についてスクリーニング調査を実施した。

日本全国の外来患者から分離されたインフルエンザウイルスをノイラミニダーゼ抑制試験で検査し、凝集抑制が50%あるかを判定した(表現型分析)。また薬剤耐性に関する遺伝子変異を特定するためにはシークエンス分析を用いた。オセルタミビルを服用した患者からの分離株は除外した。

2003/04シーズンはA/H3N2型インフルエンザウイルス1,180株中3株(0.3%)が表現型分析でオセルタミビル耐性を示し、この3株はノイラミニダーゼ遺伝子に1カ所の変異を有していた(E119V変異2株、R292K変異1株)。

2004/05シーズンではA/H3N2型558株、A/H1N1型60株の中で、表現型分析および遺伝子型分析により耐性を示すものはなかった。

2005/06シーズンではシークエンス分析でA/H3N2型251株中オセルタミビル耐性を示す変異はなかった。A/H1N1型は178株中4株でノイラミニダーゼH274Y変異を有していた。

B型インフルエンザウイルスに関しては2003/04シーズンの15株、2004/05シーズンの252株、2005/06シーズンの163株、2006/07シーズンの38株に対してシークエンス分析を行ったところ、2004/05シーズンのD197N変異を示した1株を除き、ノイラミニダーゼ阻害薬への感受性を低減させる変異は特定されなかった。

これらの暫定的な結果から、オセルタミビル使用の多い日本において、オセルタミビル耐性の頻度は低かったことが分かった。薬剤耐性が増加しているかをより良く把握するためには、オセルタミビル使用国、未使用国にかかわらず、ノイラミニダーゼ阻害薬への感受性をモニタリングし続けることが必要である。

(WHO, WER, 82, No.17, 149-150, 2007)

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