HIV検査普及週間、世界エイズデーの時期の啓発強化と検査・相談件数の増加

(Vol.28 p 163-164:2007年6月号)

わが国のエイズ対策は、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(「エイズ予防指針」)に沿って講じられてきたところであり、2006(平成18)年4月より改正された同指針に基づき、国と地方の役割分担のもと普及啓発および教育、検査・相談体制の充実、医療提供体制の再構築に取り組んできたところである。

一方、HIV感染者・エイズ患者新規報告数は、先進諸国と比較すると低い値で推移しているものの、依然として増加傾向にあり、国内におけるHIVの蔓延が危惧されている。特に、エイズを発症して初めてHIVに感染していたことが明らかとなったエイズ患者の報告数は、HIV感染者報告・エイズ患者報告の合計の約30%となっている。HIV感染者が早期に治療を開始することによって発症を予防するとともに、感染拡大を防止するために、感染者自らが早期に検査を受検して感染の有無を知ることが重要である。

従来、保健所等において、無料匿名でHIV検査・相談を実施してきたところであり、12月1日の世界エイズデー前後には、全国的に実施される啓発イベントの効果で検査・相談件数が増加する傾向にあるが、平成18年度より新たに6月1日からの1週間を「HIV検査普及週間」と設定し、世界エイズデーの半年前にもエイズへの関心喚起と検査の浸透・普及を図ることとした。HIV検査普及週間には、エイズ予防やHIV検査体制について積極的に広報するとともに、70の自治体(都道府県、保健所を設置する市および特別区。以下同じ。)においては保健所の平日昼間の検査のみならず、夜間・休日検査や迅速検査など、検査体制強化の取り組みが実施された。その結果、全国のHIV検査件数は前年同週の2,047件から3,816件に、相談件数は1,988件から2,902件へと、それぞれ1.9倍、1.5倍増加した。また、図1に示すように、6月の月間検査・相談件数は急増し、以降、検査・相談件数は、HIV検査普及週間以前の件数まで低下することなく推移した。

さらに平成18年の世界エイズデーに関するキャンペーンでは、ポスター、CM、シンポジウム、街頭キャンペーンに加え、著名アーティストが多数参加するライブイベント(Red Ribbon Live 2006)を開催し、ヤフージャパン(株)の協力を得てインターネットでイベントの動画配信を行った。また、90の自治体においても、啓発活動に併せて検査機会を拡大した。この機会に迅速検査を実施した都道府県は81%であり、保健所以外に繁華街等アクセスの良い場所で委託検査を実施するなどの工夫もなされた。その結果、第4四半期のHIV検査件数および相談件数を前年同時期と比較すると、前者は29,787件から37,449件に、後者は43,850件から49,132件へと、それぞれ1.26倍、1.12倍増加した。

図2に示すように、平成18年のHIV検査件数は、HIV検査普及週間を含む第2四半期以降、過去5年間で最も高い値で推移した。これに伴い、HIV感染者報告数も増加し、平成18年第1四半期198件、第2四半期248件、第3四半期233件、第4四半期235件、2007(平成19)年第1四半期227件と、第2四半期以降は過去の同時期に比べいずれも、発生動向調査開始以来最多報告数を記録した。さらに、HIV感染の診断時に既にエイズを発症している者のHIV感染者・エイズ患者報告に占める割合は、平成18年第1四半期の31.7%(92件)から、平成19年第1四半期には26.3%(81件)となった。また、ヤフージャパン(株)の調査によれば、HIV検査が無料・匿名で行われていることの認知度は、2004(平成16)年末の36.7%、2005(平成17)年末の38.0%から、平成18年末には66.7%に増加した。

HIV検査件数とHIV感染の診断時に既にエイズを発症している者の割合を都道府県別に比較すると、HIV検査件数の多い東京都、大阪府においては、感染診断時に既にエイズを発症している者の割合がそれぞれ21.8%、15.7%であるのに対し、その近県の検査件数は東京都、大阪府に比べて少なく、診断時に既にエイズを発症している者の割合も40〜50%であった。

以上より、HIV検査普及週間、世界エイズデーの時期の啓発と検査体制強化の取り組みが、HIV感染者がより早期に感染を知る機会の増加につながっていると示唆される。HIV感染者が早期発見・治療のための機会を逸することのないよう、エイズとその予防への理解を深める啓発活動、医療提供体制の強化とともに、夜間・休日および迅速検査など利用者の利便性とプライバシーに配慮した検査・相談体制のさらなる充実が求められている。

厚生労働省健康局疾病対策課 秋野公造 梅田珠実

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