同一利用施設(フィットネスクラブ)で感染したレジオネラ症の2例−新潟市

(Vol. 28 p. 144-145:2007年5月号)

1. はじめに
2006(平成18)年12月、市内2医療機関から2名のレジオネラ症患者発生届が新潟市保健所に提出され、分離された菌のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)による検索の結果、同一利用施設で感染したことが判明した事例を経験したので、患者経過と保健所の対応を中心に報告する。

2. 症例1(本症例の経過概略は症例2と併せ、図1に示した)
患者は58歳の男性。高血圧症で内服治療中。喫煙歴はなし。

現病歴(保健所の発生届け受理日をA日として記載):2006(平成18)年A−15日頃より湿性咳嗽、軽い倦怠感を自覚していたが、近所のBフィットネスクラブに通い、ジャグジーを使用していた。A−6日、発熱をきたし、その後咳嗽が増強し、A−4日、近医内科を受診した。内服薬(セフェム系抗菌薬など)を処方されたが改善せず、A−2日、休日急患センターを受診したところ、 SpO2低下が認められ、C病院に紹介され入院した。肺炎の診断でセフェム系抗菌薬点滴投与をうけたが呼吸困難は増悪し、同日D病院へ緊急搬送された。入院時血液検査でWBC 9,900/μl、CRP 25.9mg/dl、胸部レントゲン写真では浸潤影がほぼ全肺野を占めており、急性呼吸促迫症侯群と診断され、気管内挿管・人工呼吸器管理となり、画像所見、病歴からレジオネラ肺炎を念頭に集中治療が開始された。入院当日に施行された尿中抗原検査でレジオネラ抗原陽性であり、同日採取された吸引痰からは、D病院検査室で行われた検査でLegionella pneumophila SG1(血清群1)が分離された。

保健所の対応:A+1日、保健所職員が主治医へ連絡し、患者容態を確認し、菌株提供を依頼した。患者の容態から、実際の調査等は患者が回復するまで保留とした。A+6日、患者が抜管されるまで回復したため、調査を開始した。 A+7日、フィットネスクラブのジャグジー等の検査を施行し、施設への指導[ 1)循環配管等を含む当該浴槽等の洗浄・消毒、2)消毒後の細菌検査終了までの間、当該浴槽使用禁止、3)利用者への啓発 ]を行った。また、患者自宅を訪問し、風呂の検査および消毒指導を行った(自宅風呂浴槽からレジオネラ属菌は検出されなかった)。A+13日、フィットネスクラブ浴槽水の検査結果がレジオネラ属菌陽性(L. pneumophila SG1:90CFU/100ml)であったとの新潟市衛生試験所からの報告を受け、保健所は報道機関にレジオネラ症発症者が利用した入浴施設名、浴槽水の検査結果、保健所の指導と実施した衛生措置の内容について公表した。施設浴槽水由来菌株と患者由来菌株との遺伝子解析につき、PFGE法での検査を新潟市衛生試験所から新潟県保健環境科学研究所へ依頼し、A+21日、同一PFGEパターンとの結果を得た(図2に本症例のPFGE像を示す)。この結果をふまえ、再度当該入浴施設に対し指導を徹底し、保健所が当分の間(6カ月程度)月2回程度の立ち入り検査を実施し、管理記録簿と遊離塩素濃度の確認を行うこととした。

3. 症例2(届出受理日はA+15日)
患者は70歳男性で、糖尿病、心房細動で通院内服治療中。喫煙歴はなし。

現病歴(症例1の発生届け受理日をA日として記載):2006(平成18)年A+10日、38.9℃の発熱、風邪症状にて近医を受診。内服薬を処方され、翌日にはいったん解熱したが、 A+14日、呼吸困難を自覚し近医を受診したところ、胸部レントゲン写真で左肺炎を指摘され、E病院を紹介され受診した。入院をすすめられたがいったん帰宅し、翌日A+15日に入院した。入院時血液検査でWBC 10,330/μl、CRP 39.02mg/dl、尿検査で尿蛋白(2+)、糖(4+)、ケトン体(2+)、潜血(2+)であり、尿中抗原検査(イムノクロマト法)レジオネラ陽性でレジオネラ肺炎と診断された。患者は市内Bフィットネスクラブでほぼ毎日入浴しており、最近この施設の利用者からレジオネラ症患者が出たことを知っていた。

保健所の対応:A+15日、発生届を受理し、翌日、保健所職員が患者の経緯、状態等の調査を実施し、医療機関から喀痰検体が提出された。A+17日、自宅風呂(循環式)の検査を施行し、L. pneumophila 以外のレジオネラ属菌が検出された。家人に専門業者による消毒を勧め、実施されたことを後日確認した。A+43日、症例1の調査で分離されたフィットネスクラブ浴槽水由来菌株と今回の患者喀痰由来菌株のPFGEパターンが一致したとの報告を受け、直ちに保健所から施設へ、A+45日には主治医および患者へ連絡した。

4. 最後に
今回報告した2例は、推定感染源と患者の因果関係が証明された新潟市保健所で初めての事例である。これ以前にも患者利用施設からレジオネラ属菌が検出される事例は幾つかあったが、いずれも患者由来菌が分離されておらず、それ以上の調査を行うことができなかった。そこで新潟市保健所は、疫学調査を進めるために必要な患者検体を確保するため、2006(平成18)年7月、新潟市医師会と市内の主な病院に検体確保の協力を求める依頼文書を配布した。今回、患者由来菌を行政が確保し、利用施設と患者検体から分離された菌のPFGEパターンの一致を確認することにより感染源と患者の因果関係を明らかにすることができたのは、このような活動の成果である。今後も医療機関に対する患者届出と検体確保の周知を継続し、協力を求めるとともに、周囲行政機関・検査機関等とも連携し、レジオネラ症に対し取り組んでいきたい。

新潟市保健所
新潟市衛生環境研究所(旧新潟市衛生試験所)

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