保育園における腸管出血性大腸菌O26による集団感染事例−宮崎県

(Vol.28 p 119-121:2007年4月号)

2006年8月、宮崎県において、腸管出血性大腸菌(EHEC)O26:H11(VT1産生)による保育園の集団感染事例が発生したので、その概要を報告する(表1)。

8月18日、宮崎市内の医療機関より、EHEC O26(VT1産生)による患者(初発、小学生)が発生したとの届出があった。管轄保健所が、直ちに患者家族の疫学調査および検便を実施したところ、8月21日、患者の妹(4歳)からVT遺伝子を確認(菌の最終同定は23日)した。妹は保育園に通っていたため、保健所は当該保育園に関する調査を開始した。調査内容として、当初、施設の衛生管理状況の調査、保育園職員・園児の健康状況の調査、および職員の検便を実施したが、園児の健康調査の結果、5人の有症者(下痢)があったこと、ならびに、医療機関から新たに2名の患者発生届出(同保育園児)があったことから、検便の対象を、職員、園児および学童保育児全員に拡大した。

検便は保健所(395名)および民間検査機関(11名)で実施した。保健所では、便をEC培地で一晩増菌培養後、PCRでVT陽性を確認した検体について、CT-SMAC培地、クロモアガーO157培地を用いて菌を分離した。

最終的に、園児229名、学童保育児45名、保育所職員49名、接触者(家族)78名の合計401名を検査し、小学生1名(初発患者)、保育園児29名、家族3名(保護者2名、兄弟の小学生1名)の計33名からEHEC O26(VT1産生)を検出した(表2)。

また、宮崎県衛生環境研究所に、感染者33名のうち、初発患者を含む26名からの分離菌26株が集められ、パルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子解析が実施された(図1)。その結果、1株(図1のNo.26は1本バンドが異なる)を除く25株がすべて同一のDNA切断パターンを示したことより、これらの分離菌は同一起源であり、今回の事例は本菌を原因とした事例であることが判明した。

EHEC O26(VT1産生)陽性者の検出状況(判明日)を図2に示す。初発患者(小学生)の発症後、その妹から菌が検出され、その後、妹が通っている保育園の園児から次々と菌が検出された。このことから、今回の事例では、初発患者の発生原因は特定できなかったが、初発患者→家族→保育園園児→その家族(5家族)へ、人→人感染により感染が広がったと考えられた。特に、保育園内では、0〜2歳の低年齢の組で感染者が多く、低年齢組では、感染が拡大しやすい要因があると推測された(図3)。

また、菌陽性者33名中、27名は無症状で、6名に下痢(67%)、腹痛(50%)、発熱(50%)、血便(33%)の症状が見られた。

感染者発生期間中、管轄保健所は保育園に対し、感染症予防対策に関する教育・指導を行ってきたが、9月6日以降、新たな感染者発生が見られなくなったこと、園児の健康観察により感染を疑わせる症状が見られなくなったこと、保育園内で手洗い・消毒等の衛生管理が継続して徹底されていること、最終患者の治療が終了し、病原体消失が確認されたことにより、9月25日に本集団事例への対応を終了した。

宮崎市保健所
園田千草 田上麻子 長友大三 山田哲子 淵脇里江子 春山 優
中村洋子 日高良雄
宮崎県衛生環境研究所
河野喜美子 岡田美香 塩山陽子 井料田一徳 若松英雄

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る