輸入類鼻疽、2005年−米国・南フロリダ

(Vol.27 p 282-282:2006年10月号)

2005年、フロリダ保健局に2例の類鼻疽が報告された。類鼻疽はフロリダでは2003年に届出義務のある疾患になったが、それ以降では初めての症例であった。 類鼻疽はグラム陰性、腐生性細菌であるBurkholderia pseudomallei B. pseudomallei )により引き起こされる疾患である。肺炎を生じることが最も多いが、皮膚や軟部組織に膿瘍を形成することもある。東南アジアや北オーストラリアで常在流行しているが、北緯20度〜南緯20度までの熱帯地域では散発的にみられる。常在流行地域では、土壌や水の中の菌を接種あるいは吸入することにより感染する。潜伏期間の中央値は9日(1〜21日)であり、2型糖尿病を有する人は特に発症しやすい。常在流行地では、敗血症や肺病変を有する症例での致死率は20〜50%に上る。

症例1(Broward郡):8月22日、成人発症糖尿病、およびギラン-バレー症候群を有する48歳男性が背部痛、39.2℃の発熱、両下肢の筋力低下、およびしびれ感を訴えて受診し、左下葉肺炎、直腸周囲膿瘍、およびギラン-バレー症候群再発の可能性と診断された。入院して、セフトリアキソンとアジスロマイシンで治療を受けた。8月27日、入院時に採血した血液培養からB. pseudomallei が検出された。8月31日にレボフロキサシン経口薬の21日間処方を受けて退院したが、9月11日に高度の背部痛と左側胸膜痛を訴え、再入院となった。急性の両下肢麻痺と知覚消失を認め、脊髄MRI にて胸椎部位の硬膜外膿瘍が明らかになり、脊髄減圧術を受けた。9月16日に膿瘍液の培養でB. pseudomallei が分離された。9月26日、対麻痺の状態でリハビリ施設へ移った。疫学調査の結果、7月17日〜8月7日の期間にホンジュラスへ行っていたことが分かった。

症例2(Miami-Dade郡):9月22日、80歳女性が発熱(39.4℃)、頭痛、筋肉痛などが4日間続き、肺炎の診断で入院した。経静脈的輸液、セフトリアキソン、アジスロマイシンで治療を受けた。9月23日に心筋梗塞と呼吸器合併症を発症し、9月24日に抗菌薬がバンコマイシンとセフェピムに変更されたが、同日死亡した。9月26日、入院時に採血した血液培養でB. pseudomallei が検出されたことが報告された。疫学調査では、患者はホンジュラス在住で、家族を訪ねるために9月18日にフロリダに来ていたことが分かった。

症例1は菌の分離後5週間以上経ってから報告されたが、検査技師がB. pseudomallei を、フロリダでは届出義務疾患となっている類鼻疽と結びつけなかった。また、Miamiの病院の検査技師3人は培養プレートのにおいを嗅ぎ、Broward郡の病院の検査技師6人はセイフティーキャビネットの外で培養操作を行い、高リスクな曝露を受けた。しかし、9人全員とも発症しなかった。

CDCは、B. pseudomallei を含む疑いのある臨床検体は、BSL 2として取り扱うことを勧めている。培養プレートのにおいを嗅ぐことは危険であり、禁止すべきである。分離菌はエアロゾルや飛沫として曝露し、あるいは傷のある皮膚に接触する可能性があることから、その取り扱いはBSL 3で行うべきである。臨床医は類鼻疽を疑わせる症状、リスク因子、病歴を有する患者から検体を採取した時、検査技師に知らせるべきである。

(CDC, MMWR, 55, No.32, 873-876, 2006)

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