特集中の用語および結核報告システムについて

(Vol.27 p 257-257:2006年10月号)

1.結核発生動向調査

結核患者の発生状況や患者の背景要因、結核対策の実施状況などを常時把握するため、保健所に登録されている結核患者・登録者の情報を電算化して、情報を保健所から都道府県・政令市を通して国に集中するシステム。保健所や県市でも随時必要な集計や検索を行うことができる。国では毎月および年末に全国分の集計解析を行い、県市に還元している。

この情報システムの基盤は結核予防法による患者発生届に始まる保健所の患者登録制度である。

2.指標の説明

 罹患率:1年間に新たに結核と診断された人(再発を含む)の数÷総人口(人口十万対)。

 有病率:年末現在時点で結核の治療を受けている人の数÷総人口(人口十万対)。(年内に罹患しても年末までに治療が完了していればこの数には入らない。)

 登録率:年末現在時点で保健所に結核のために登録されている人の数÷総人口(人口十万対)。

 結核死亡率:1年間に結核が死亡原因で死亡した人の数÷総人口(人口十万対)。

3.結核患者等の分類など

 結核登録者:結核のために保健所に登録されている人。現在結核の治療中の人はもとより、治療終了後一定期間の経過観察中の人も含まれる。ただし、発病していても一部登録から漏れている患者もありうる。

 活動性結核患者:「活動性結核」とは結核のため治療を必要とする人(治療を指示されていても、治療から脱落している人などはこの数には入らない)。

 新登録結核患者:新たに結核と診断され、保健所に登録された人。1997年までは非結核性抗酸菌陽性の者を結核として扱ってきたが(旧分類)、1998年からはこのような患者は統計上結核患者に含めないこととなった(新分類)。

 全結核:肺および肺外結核を合わせたもの。

 肺結核:肺に病巣を作った結核。肺外結核を合併した肺結核患者は統計上肺結核患者として数える。

 肺外結核:肺以外の臓器に病巣を作った結核。全身に病巣が散布した粟粒結核を含む。

 菌陽性肺結核:肺結核であって細菌学的に菌の排出が証明されたもの。菌の証明の方法としては、塗抹、培養、核酸増幅法などがある。

 喀痰塗抹陽性肺結核:菌陽性肺結核のうち、喀痰の塗抹染色検査で陽性と判定されたもの。感染性が特に強い。

4.結核の治療について

 初回治療:生まれて初めて結核の治療を受ける場合。

 再治療:初回治療でいったん治癒した後、病気が再発して治療が再度必要になった場合、および治療中に治療を放棄したり、治療経過が不良のため、やり直しの治療を行う場合。

 標準治療:初回治療の患者に行う治療の方式はエビデンスにもとづき標準化されており、またこれで治療を行った場合には、患者の菌所見の経過にもとづき治療成績を一律に判定する基準が国際的に定められている。

5.結核対策の改定

2004年4月から結核予防法の改定が行われ、対策が一新した。主な改正点は以下の通り。

 予防接種:BCG接種は乳児期(原則生後6カ月以内に)1回のみ、ツベルクリン反応検査を省略して行う。

 定期健康診断:従来の無差別的な方式では効率が極端に低いので、対象を限定して行うこととした。具体的には、住民健診は基本的には65歳以上の人に行う(ただし最終的には自治体の裁量)。事業所健診は教職員、医療従事者、福祉関係職員など以外は廃止。高校以上の学校では入学時に1回のみに限定。

 定期外健康診断:患者の周囲にいる人−同居家族や職場の同僚など(初発患者から感染を受けたかもしれない人、初発患者に結核を感染させたかもしれない人)に対して行う健診(接触者健診とも呼ばれる)で、実施については保健所に強制力をもたせるなど、従来よりも厳密に行うこととした。

 治療:発見された患者が完全に治癒するように、患者の治療を主治医と保健所が共同して支援するために日本版DOTSが改訂結核予防法のもとで策定された。これは患者が処方された治療を規則的に完遂するために、服薬の確実な実施を主治医や保健所が確認し、またその結果を地域で評価するものである。

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