保育所で発生したSalmonella Enteritidis集団食中毒−大阪市

(Vol.27 p 197-197:2006年8月号)

2005(平成17)年9月8日に市内診療所医師から区保健福祉センターを通じて市保健所に、A保育所に通所している幼児10名が発熱、嘔吐、下痢、腹痛等の症状を呈しており、うち1名が入院している旨の届出があった。

市保健所が調査したところ、通所している幼児343名中171名および職員など32名中6名、計177名が9月7日〜9月10日にかけて発熱、嘔吐、下痢、腹痛などの食中毒症状を呈していることが確認された(最終的には患者発生は9月5日〜9月10日、患者数は園児182名、職員8名、計190名となった)。患者発生は5日から始まり、8日をピークにして7日〜9日に集中していた(図1)。また、患者の症状は発熱、腹痛、下痢、および嘔吐を主症状とし、発熱は平均38.6℃であった(表1)。

当研究所に搬入された検体について食中毒菌検査(糞便、食品、施設ふきとり水)およびウイルス検査(糞便)を実施した結果、患者便24件中12件、健康者便2件中1件、調理人便4件中3件からSalmonella Enteritidis(S . E)が検出された(表2)。9月5日〜7日の保存食(原材料を含む)については、7日の昼食に提供されたツナサラダからS . Eが検出された。他の原因となる食中毒菌およびウイルスはいずれの検体からも検出されなかった。市保健所の調査から共通食は同保育所調理室で提供された食事以外なく、発症者らの発症状況が類似していることから、同保育所調理室を原因施設としたS . E集団食中毒であることが明らかになった。また、原因食品については患者発生調査から5日および6日に発症した患者が7名おり、その中の1名は7日の給食を喫食していないがS . Eが検出されたことと、患者発生のピークおよび患者の共通食から9月5日〜7日に提供された給食および午後のおやつを原因食品とした。

大阪市ではS . Eによる食中毒事例は10年前に比べると減少しているが、ここ数年はほぼ横ばい状態が続いており、今後も十分な注意が必要である。

大阪市立環境科学研究所微生物保健課
長谷 篤 小笠原 準 北瀬照代 中村寛海 和田崇之 梅田 薫 入谷展弘 久保英幸
改田 厚 阿部仁一郎 後藤 薫 石井營次
大阪市健康福祉局健康推進部生活衛生課
大阪市保健所営業監視課

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る