わが国における腸炎由来Campylobacter jejuni の血清型別検出動向およびキノロン剤に対する耐性菌の出現状況−カンピロバクター・レファレンスセンター

(Vol.27 p 173-175:2006年7月号)

1988年からわが国における腸炎由来Campylobacter jejuni の血清型別検出動向を調査する目的で衛生微生物技術協議会の7つの支部センター(秋田県、東京都、愛知県、大阪府、広島市、山口県、熊本県)では、Liorシステムによる型別方法により、国内で発生した集団および散発のカンピロバクター腸炎から分離された菌株の血清型別に係わるレファレンスサービスを行っている。また、近年、ニューキノロン剤に対するC. jejuni の耐性株の増加が世界的に問題となっており、本レファレンスグループでもキノロン剤耐性菌の動向調査を行っている。本号では、1998〜2004年までの7年間の活動で集積された型別結果の概略、および薬剤感受性試験の結果について紹介したい(1988〜1998年5月の成績についてはIASR 16: 151, 1995, 18: 84- 85, 1997および20: 109-110, 1999を参照)。

血清型別:型別に供された菌株は総計6,257株で、その内訳は、散発下痢症由来4,596株、集団食中毒313事例由来の1,661株である。

散発下痢症由来株の主要血清型を表1に示した。供試した4,596株中2,930株(64%)が単独血清型に型別され、その血清型は本システムで採用した30血清型すべてにわたっていた。頻度の高いものは、LIO4で743株(16%)であった。次いで、LIO7(6.7%)、LIO1(3.5%)、LIO2(3.4%)であり、この検出順位は先に報告したものと同様の傾向であった。検出数が10株未満という頻度の低い血清型は、LIO15(0.2%)、LIO22(0.2%)、LIO39(0.1%)であった。201株(4.4%)は同時に複数の抗血清に反応し、型別不能は1,465株(32%)であった。

本調査期間中に集計された集団食中毒事例(患者由来株2株以上を対象)258事例中98事例(38%)においては、患者由来株の血清型は単一であった。98事例で確認された血清型は24血清型にわたり、最も高頻度な血清型は、LIO7の23事例(23%)であった。この中には、水系感染事例として報告された2002年秋田県、2004年石川県(いずれも血清型LIO7)の2例が含まれており、いずれも簡易水道が原因であった。次いで、LIO4、LIO50、TCK12の各5事例(5.1%)が続いている。しかし、残り160事例(62%)では、患者から複数の血清型菌が検出された。また、24事例(24%)由来株は型別不能であった。

薬剤感受性試験:供試株は、散発下痢症由来C. jejuni 4,183株、供試薬剤はキノロン剤としてノルフロキサシン(NFLX)、オフロキサシン(OFLX)、シプロフロキサシン(CPFX)、ナリジクス酸(NA)の4種に加え、テトラサイクリン(TC)およびエリスロマイシン(EM)の6剤である。方法は菌株をBHIブイヨンで微好気培養し、その培養液をミュラーヒントン寒天(OXOID)に塗抹後、センシディスク(BBL)を置き、2日間微好気培養して阻止円を測定するKB法によった。

その結果、供試菌株4,183株中2,216株(53%)が6剤すべてに感受性であった。薬剤耐性菌出現率の年次推移を図1に示した。NAおよびニューキノロン系薬剤(NFLX・OFLX・CPFX)に対する年次別耐性率は30〜40%を推移しているが、やや増加傾向が認められ、単剤よりも、4剤すべてに耐性を示す割合が高い。サルモネラや赤痢菌等その他の腸内細菌において、キノロン系薬剤に対する耐性菌、もしくは低感受性菌の増加が問題となっているが、それらに比較し、カンピロバクターは、高度耐性を示すものが多い。一方、カンピロバクター下痢症治療の第一選択薬であるEMに対する耐性率は1〜3%であり、調査開始時期からほとんど変動は見られない。TC耐性は30〜40%を推移しているが、若干減少傾向が認められる。

カンピロバクター腸炎は、欧米諸国においても、発生頻度の高い下痢症起因菌である。わが国においても、全国食中毒統計等から、その急増ぶりがうかがえる。しかし、欧米においては、その発生状況と薬剤耐性菌出現状況に対するモニタリングが積極的になされているが、残念ながら本レファレンスグループに届く情報は限られた一部にすぎない。また、わが国においては、散発患者を含めた全数、あるいは定点の集計は行われていないため、患者数の実態の把握には至っていないのが現状である。今後欧米諸国と同様に、散発事例を含めた集計、および薬剤耐性のモニタリングの全国規模での実施が望まれる。

衛生微生物技術協議会
カンピロバクター・レファレンスグループ
秋田県健康環境センター
東京都健康安全研究センター
愛知県衛生研究所
大阪府立公衆衛生研究所
広島市衛生研究所
山口県環境保健研究センター
熊本県保健環境科学研究所
国立医薬品食品衛生研究所

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