成人グループに発生したA群ロタウイルスによる食中毒−新潟県

(Vol.27 p 156-156:2006年6月号)

新潟県上越保健所管内の寿司店から、2006年3月16日の昼食に、ちらし寿司の出前をとったグループ66名中30名が、3月17日14時から下痢、発熱、腹痛などの症状を訴え、うち、11名が医師の治療を受けた。患者6名の検便の結果、ノロウイルス、サポウイルスは検出されず、ロタウイルス陽性との病院における検査情報から、A群ロタウイルスについてRT-PCR検査を行った結果、患者6名全員が陽性となった。

流行曲線()が一峰性を示したことから単一曝露が疑われた。患者グループは同一職場に勤務しているものの、職場内における行動の共通性に乏しく、ちらし寿司の喫食以外に共通行動が見あたらなかった。寿司店の調理従事者2名のうち1名の検便(22日採取)からA群ロタウイルスが検出された。患者4名と従事者1名の検便のRT-PCR産物について遺伝子解析を行った結果、VP7領域の912bpで5株は100%一致し、G2型に分類され、DDBJにおけるBLAST検索では、Human Rotavirus A/Isolate Sc27 (AJ293722)に近縁であった。

ロタウイルスが検出された従事者は、調理した当時は健康状態に異常は無く、3月21日に下痢を発症していたことから、従事者がウイルスを保有していたか、あるいは共通の感染源が飲食店にあり、従事者を介して食品汚染が起こったものと考えられた。調理従事者の家族に小児はおらず、提供の前日となる3月15日に、寿司店内で客が子供のおむつ替えをしていたことが確認されていたが、ウイルスの汚染源を確定することはできなかった。

A群ロタウイルスは小児の胃腸炎病原体として知られており、保育園における集団胃腸炎で保育士が感染する事例があるが、本事例の患者グループの年齢幅は25歳〜60歳、平均42.7歳で、成人主体の集団感染であったことが注目される。また、症状の発現率は、下痢80%、発熱80%、腹痛73%、吐気27%、嘔吐20%、下痢は水様性で10回以上の下痢を呈した患者は54%、発熱は37.6℃〜39.5℃の患者が63%と、ノロウイルスの症状が嘔吐が主徴であるのに対し、本事例は激しい下痢が特徴であった。3月16日の昼食を曝露時間とした場合、平均潜伏時間は57.8時間(最短25.5時間、最長83.5時間、中央値64時間)で、2名は発症時間が100時間を超えていたことから、二次感染と考えられた。

事件後、当該地域の小児科定点で、小児のロタウイルス感染患者便5件の検索を行ったが、G2型は検出されなかった。また、県内の病原体サーベイランスでも、今シーズンのロタウイルス検出・型別事例が11件あるが、A群G2型は現在までに検出されていない。

新潟県保健環境科学研究所 田村 務 西川 眞
新潟県上越地域振興局健康福祉環境部 新井田良平 渡辺和伸 吉岡 丹

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