飲食店(焼肉店)が感染源とされた腸管出血性大腸菌O157集団感染事例−佐賀県

(Vol.27 p 145-146:2006年6月号)

2005(平成17)年7月1日、県内医療機関より管轄保健所へ、下痢、嘔吐等の症状を呈した患者から腸管出血性大腸菌O157(VT1&2)が検出されたと届出があった。また同月4日に県内医療機関より別の管轄保健所へ、血便の症状を呈した患者の検便を実施したところ腸管出血性大腸菌O157(VT1&2)が検出されたと届出があった。

上記の届出を受け、患者および家族等接触者に対する喫食、症状等の聞き取り調査および検便を実施した。各管轄保健所での喫食調査の結果、両患者家族は同一日に県内の同一飲食店(焼肉店)を利用しており、当該飲食店の食品が原因として疑われた。また両患者家族は面識がなく、行動を共にしたことがないことが確認された。

同一日に、この飲食店を利用した喫食者は128名であり、有症者は両家族の4名のみであった。その年齢内訳は、10歳未満男児3名、30代男性1名で、臨床症状は腹痛、嘔吐、下痢、血便だった。

検査は、患者および家族(接触者)の検便14検体、飲食店従業員の検便7検体、店のふき取り3検体および食品(原材料)2検体を実施した。その結果、保健所において両患者家族(5名、5名)と飲食店の従業員1名の計11名から腸管出血性大腸菌O157:H7が分離された。7名は無症状病原体保有者であり、その年齢内訳は10歳未満男児1名、10歳未満女児2名、20代男性1名(従業員)、30代女性2名、60代女性1名であった。

当センターにおいてPCR法でVero毒素遺伝子型別を行った結果、VT1&2と初発患者を含め全員一致していた。これらの分離菌株は、制限酵素Xba Iによるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)により、2家族および従業員1名を含む9名の遺伝子パターンが同一と認められた。なお、他2名のパターンは9名とは4バンド異なっていたが、2名のパターンは同一だった(図1)。

食品および施設・器具等のふき取りからは、菌は分離されなかった。

以上のPFGEおよび疫学的調査等の結果に基づき、今回の腸管出血性大腸菌O157の集団事例は、県内同一飲食店(焼肉店)での喫食が原因と推定され、この飲食店に対して行政処分を行った。

佐賀県衛生薬業センター
眞子純孝 岸川恭子 徳永日出乃 舩津丸貞幸 久保康典
佐賀中部保健所 園田元康 吉原琢哉
杵藤保健所 那須藤彰 笠原かつ子

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