県内北部で地域流行が認められた手足口病の患者から検出されたEV71−宮城県
(Vol.27 p 120-121:2006年5月号)

2006年感染症発生動向調査事業の患者報告数より、第10週から県内北部の1保健所管内で手足口病の流行が認められた。流行期間中に同地区の2定点医療機関で、手足口病と診断された患者6名中3名の検体よりエンテロウイルス71型(EV71)を検出したので報告する。

患者情報によれば、この地域では、第10週に本年初の患者報告(定点当たり4.00)があり、第11週にピーク(同5.67)を認め、その後は減少傾向にある。同地域に隣接する2保健所管内においても、それぞれ第6週〜第13週、第3週〜第7週の期間に患者報告があったが、第14週現在、散発的に患者報告があるものの、全県的な流行は認められていない。

EV71が分離された検体は、2006(平成18)年3月7日に採取された2歳男児の糞便と、3月14日に採取された1歳および3歳女児の咽頭ぬぐい液の3件で、いずれの患者も水疱・丘疹等の発疹を主症状としていた。ウイルスの分離にはHEp-2、RD-18S、Vero、CaCo-2細胞を用いた。その結果、糞便はRD-18Sに、ぬぐい液はCaCo-2にそれぞれ感受性を示し、他の細胞でのCPEは観察されなかった。分離ウイルスの同定は、培養上清を用いてエンテロウイルス遺伝子のVP4領域増幅を目的としたRT-PCR法にて行い、3症例ともに増幅産物を確認した。直接シークエンス法で増幅産物の塩基配列を決定後、NCBIのBLASTで遺伝子の相同性の検索を行った結果、EV71と同定された。

EV71は、重篤な中枢神経疾患の原因となる場合があり、死亡例も報告されている。このことから手足口病とEV71のサーベイランスは非常に重要であり、今後県内での流行には十分警戒を要する。本県の感染症発生動向調査では、手足口病患者からEV71が分離されたことを直ちに週報に記載し、広く医療機関へ情報を提供し、注意を喚起した。

宮城県保健環境センター微生物部
佐藤千鶴子 庄司美加 植木 洋 佐藤由紀 沖村容子 齋藤紀行
宮城県仙南・仙塩広域水道事務所 菊地奈穂子
八木小児科医院 八木恒夫
沼倉小児科 沼倉碩彦

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る