鳥インフルエンザに関するファクトシート−WHO、2006年4月

(Vol.27 p 126-127:2006年5月号)

鳥における鳥インフルエンザについては、H5、H7亜型鳥インフルエンザウイルスのすべての株が高病原性である訳ではないが、最近の研究から、低病原性のH5、H7ウイルスが家禽において短期間循環することにより、高病原性に変異しうることが分かった。

長い間、野生の水鳥は家禽に対して低病原性のウイルスを伝播しても、高病原性のウイルスを保有したり、家禽に直接に高病原性のウイルスを伝播することはないと考えられてきたが、ごく最近では、渡りをする水鳥の少なくともいくつかの種類は高病原性のウイルスを保有しており、渡りの経路に位置している地域にそれらのウイルスを拡げていると考えられている。

またいくつかの国で飼い猫や、野鳥を捕食するブナテン、野生のミンクといった哺乳類でのH5N1型ウイルス感染が報告された。現在のところ、本疾患の疫学に重要な役割をしているとは考えられないが、飼い猫と人間とは密接なつながりがあるので、猫がより広範に感染していることを示す徴候があるかどうかの監視が必須である。

H5N1型ウイルスのヒトへの主要な感染経路は、病鳥や死亡鳥との濃厚な接触によるとされるが、鳥の糞などに汚染された環境からの感染が疑われる例もある。一方、本ウイルス汚染地域で鶏肉を食べても、十分に加熱されていれば感染のリスクとはならない。

潜伏期間は2〜8日とされるが(17日の可能性もあり)、WHOは現在、実地調査や接触者の追跡調査のためには、潜伏期間を7日とすることを推奨している。

初発症状としては高熱(通常38℃以上)とインフルエンザ様症状があり、他に病初期に、下痢、嘔吐、腹痛、胸痛、鼻・歯肉出血がみられることがある。多くの患者では初期に下気道症状が認められ、またほとんどの患者はウイルス性肺炎を生じていた。急激な呼吸不全の進行と多臓器障害もよくみられる。検査値異常としては白血球減少(主としてリンパ球減少)、軽〜中等度の血小板減少、アミノトランスフェラーゼの上昇、ときにDICなどがみられる。

オセルタミビルの有効性については、現時点ではデータが限られている。しかし感染が疑われる症例に対しては、可能な限り早期にオセルタミビルの投与を開始するべきである。本症は致死率が高く、通常のインフルエンザよりはウイルス複製が長期間続くため、発症後時間が経った症例でも投与を考慮すべきである。重症の場合は1日投与量を増量したり、投与期間の延長を考慮する必要もあるが、1日投与量が300mgを超えると副作用が増加することにも注意すべきである。

現在までに、9つの国から200名近くの確定症例が報告されているが、それらのすべては家禽、あるいは野鳥での高病原性H5N1型鳥インフルエンザの流行と同時期に起こっている。しかし、鳥における疾患発生の公式報告より前にヒト症例が探知されたこともある。確定症例の半数以上は死亡している。ヒトにおける本症は稀ではあるが重篤な疾患であり、パンデミックに発展する可能性のゆえに、詳細な監視と研究調査が必要である。

(WHO, WER, 81, No.14, 129-136, 2006)

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