東京都のHIV/AIDS発生状況と取り組みについて

(Vol.27 p 118-119:2006年5月号)

1.東京都のHIV/AIDS発生状況

2005年、新しく東京都に報告されたHIV感染者(以下HIV)は322件(過去最高:男308、女14)、AIDS患者(以下AIDS)は95件(過去4番目:男87、女8)であった。HIVとAIDSをあわせた報告は、1日1件以上のペースであり、2005年、過去最高となった(図1)。国籍・性別では、日本国籍男性の報告数が増加しており、ここ10年で2倍以上の報告数があった(図2)。推定感染経路では、同性間性的接触が増加しており、ここ10年で約3倍の報告数があった(図3)。年齢別では、HIVは20〜30代(72%)の今後の社会を担う世代に、AIDSは30〜50代(81%)の働き盛りの世代に多い。

2.東京都のHIV/AIDSの取り組み

東京都では、「東京都エイズ対策基本方針」に基づき、毎年、事業実施計画を策定し、エイズ対策を推進している。事業実施計画は、3つの目標[(1)感染拡大の防止、(2)医療の確保と感染者への支援、(3)偏見のない社会づくり]と5つの施策[(1)普及・啓発活動の強化、(2)相談・検診体制の充実、(3)医療体制の整備、(4)療養支援の確保、(5)調査・研究の充実]からなっている。

普及・啓発活動の強化:広報活動としては、世界エイズデーの前後1カ月を「東京都エイズ予防月間キャンペーン」と定め、保健所や区市町村、都の各部署が連携し、街頭キャンペーンやTVCM、ポスター掲示など、集中的に予防啓発を行っている。また、若い年代の人から同年代の仲間にエイズ予防の大切さや命の大切さを伝えるエイズ・ピア・エデュケーションなどを実施している。

相談・検診体制の充実:相談体制としては、主に都民向けの東京都エイズ電話相談(年間約20,000件)や保健所職員等への相談スキル向上を目的とした研修などを行っている。

検査体制としては、保健所(性感染症も検査可、一部保健所では即日検査を実施)と東京都南新宿検査・相談室(平日夜間、休日に実施。新宿駅徒歩3分と利便性が良い)の大きく2つの形で実施している。なお、今年度、多摩地域では、月2回土曜日に迅速検査を行っている。

検査の実績と陽性件数をみると、2005(平成17)年の陽性件数は、若干減少傾向であったが、近年はともに増加傾向である(図4)。

医療体制の整備:都内には、エイズ診療拠点病院(総合的かつ高度な医療を提供する病院)が42病院、エイズ診療連携病院(エイズ拠点病院と連携して小児科、産科など専門分野における高度な医療を提供する病院)が10病院ある。その病院間の相互連携や一般医療機関とのネットワーク化を推進しており、拠点病院への受診や医療連携の一助となる「エイズ診療協力病院初診受診案内」を作成している。また、患者・感染者の方が職場や住まいの近くなど、身近な地域で歯科診療を受けられるよう「エイズ協力歯科診療所紹介事業」を実施している。その他、HIV/AIDS症例懇話会など医療従事者への講習会を実施している。

療養支援の確保:患者・感染者の療養を支援していく体制として、医療機関の要請によりカウンセリングの必要な方への専門相談員の派遣や日常生活で必要な情報をまとめたパンフレット「たんぽぽ」の作成を行っている。また、保健所、エイズ診療拠点病院、区市町村保健福祉担当等のネットワーク化を目的とした地域医療連携会議を開催している。

調査・研究の充実:エイズ対策の推進に必要な調査・研究を実施するため、専門家会議による業務統計の分析、評価を行っている。

東京都のエイズの現状は、報告数が年々増加していることからも、厳しい状況であり、今後とも事業実施計画に基づき、事業を推進していく。

東京都福祉保健局健康安全室感染症対策課 上野泰弘

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