野生ポリオウイルス1型の再伝播とポリオ終息国への持ち込みの影響

(Vol.27 p 105-106:2006年4月号)

1988年のWHO総会でのポリオ根絶決議の後、ポリオ流行国の数は1988年の125カ国から2003年には6カ国まで減少した。しかし2002年以降、それまでポリオが終息していた21の国々では、残っていた流行国からの野生ポリオウイルス(WPV)1型の持ち込みがあり、それらの国の多くで大きな流行が発生した。以下に2002〜2005年の状況をまとめる。

遺伝子学的な追跡調査の結果、アフリカの11カ国(ブルキナファソ、チャド、カメルーン、ベナン、ボツワナ、ガーナ、トーゴ、中央アフリカ共和国、コートジボワール、マリ、ギニア)の再発生国は、いずれもナイジェリアからの直接あるいは間接的な持ち込みによるものであった。ナイジェリア起源のこのWPV1型は、2004年チャドでの流行からスーダンに広がった後、2004年11月〜2005年7月にサウジアラビア、エチオピア、イエメン、エリトリアへ、さらに、サウジアラビアからインドネシアへ、イエメンからソマリアへと拡大した。また2002年以降、インドからは3カ国(レバノン、アンゴラ、ネパール)に持ち込まれた。各国の症例数は1〜478人であった。

再発生国21カ国のうち8カ国では、感染伝播は持続しなかった。他の13カ国では複数症例からなる流行が認められ、そのうち8カ国では終息したと考えられたが、後者での感染伝播持続期間は 中央値315日(範囲:184〜743日)であった。WHO/UNICEFのデータを元に、伝播が持続しなかった8カ国と持続した13カ国とを比較したところ、月齢12カ月までのOPV 3回接種率の中央値では、前者が83%で後者の52%より有意に高く(p=0.001)、国におけるOPV 3回接種率80%以上の地区の割合では、前者の中央値が63%で、後者の20%より有意に高かった(p=0.009)。

上記21カ国における、初発例の麻痺発症日から実験室診断までの期間は、中央値51日(範囲:24〜123日)であった。また、実験室診断から初回の大規模追加予防接種活動(SIA)までの期間は、中央値37日(範囲:7〜102日)であった。このSIAはすべての国で、現在までに2〜10回(平均4回)実施されており、西・中央アフリカおよびスーダンでは、22カ国で同時期に行われた。

2006年1月24日時点で、過去6カ月以内に伝播があったのは、伝播が持続している5カ国(アンゴラ、エチオピア、インドネシア、ソマリア、イエメン)と、持ち込みが複数回生じているネパールの計6カ国である。

(WHO, WER, 81, No.7, 63-68, 2006)

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