2005年10月下旬〜11月下旬のインフルエンザ発生状況−沖縄県

(Vol.27 p 45-46:2006年2月号)

2005年10月中旬〜11月上旬の間に、沖縄県本島北部の中学校でインフルエンザによる欠席者の報告があり、さらに11月下旬には、本県中部の老人福祉施設で集団発生があったので概要を報告する。

中学校での欠席状況:インフルエンザによる欠席状況を図1に示した。欠席者は、10月18日〜11月9日まで確認され、前半は1年生、後半は3年生が欠席していた。2年生(在籍130名)に罹患者はいなかった。罹患した人数は1年生が8名(在籍131名)、3年生が5名(在籍131名)、合計13名で、学級閉鎖には至らなかった。欠席者のうち2名は、定点医療機関を受診しており、39℃台の発熱および筋肉痛・関節痛を呈し、ワクチン接種歴はなかった。

老人福祉施設での発生状況:インフルエンザ発生状況を図2に示した。利用者数76名(入所者70名、ショートステイ6名)、職員48名の施設で、11月21日〜28日の間に43名(入所者32名、ショートステイ2名、職員9名)が38℃台の発熱を呈しインフルエンザを発症した。有症者のピークは11月23日の20名で、この日に、患者および全利用者に対し治療あるいは予防的なオセルタミビルの投薬が行われ、11月28日に終息した。職員・利用者のほとんどがインフルエンザワクチン接種を受けていなかった。

ウイルス分離:中学校の欠席者のうち10月20日、11月9日に定点医療機関を受診した2名と、老人福祉施設患者のうち、11月23日に発病した5名の咽頭ぬぐい液を採取し、検体とした。MDCK細胞に接種したところすべての検体でCPEが確認されたため、培養上清について、国立感染症研究所から配布されたインフルエンザウイルス抗血清を用いてHI試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を行い、その結果を表1に示した。分離されたウイルス7株のHI価は、抗A/New Caledonia/20/99(ホモ価 1,280)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002(同 640)および抗B/Brisbane/32/2002(同 5,120)に対して<10、抗A/New York/55/2004(同 5,120)に対して1,280〜2,560を示したことから、AH3型インフルエンザウイルスと同定した。

考 察:本県では2005年の夏季にAH3型インフルエンザウイルスが流行し、第27週には注意報が発令され例年とは異なる状況であった(IASR 26: 243-244, 2005)。その後、県内58カ所のインフルエンザ定点からの患者報告によると、第33週には定点当たり1.38まで患者は減少したが、それ以降も第50週まで定点当たり0.97〜2.3人で推移している。今回の分離株もAH3型であることから、夏季から継続して活動しているウイルス株の可能性が考えられた。

今回の2事例において、感染ルートは明らかでないが、中学校では、10月27日に欠席した1年生1名と翌28日に欠席した3年生1名は兄弟であることから、兄が家庭内で弟から感染し、さらに3年生の生徒間で感染が広がったと推察された。老人福祉施設では、利用者・職員がワクチン未接種にもかかわらず、患者の発生は比較的速やかに終息した。これは、患者発生後、施設側が直ちに有症者や有症者以外の全利用者に対しオセルタミビルを投薬するなど、迅速に対応したことが理由として考えられた。また、発病日にオセルタミビルを投薬後、少なくとも24時間以内に採取した患者5名の咽頭ぬぐい液からは、すべてウイルス分離が可能であった。

沖縄県衛生環境研究所 平良勝也 仁平 稔 糸数清正 久高 潤 大野 惇
沖縄県感染症情報センター 嘉数保明
沖縄県北部保健所 長浜久美子
沖縄県中部保健所 平良ちあき 神山安澄 国吉秀樹

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