ワクチンの安全性に関する国際諮問委員会(GACVS)

(Vol.27 p 49-50:2006年2月号)

2005年12月1〜2日にスイスのジュネーブで、第13回GACVS会議が開かれた。主な結論は以下の通りである。

ワクチン・セーフティー・ネット事業:この事業の目的は、インターネットを通じてワクチンの安全性に関する情報を世界的により良く還元することである。これには、この分野の情報を発信している20以上の組織が参加している。2005年の主な活動としては、サイト評価のプロセスの強化、ヨーロッパにおける本ネットワークの拡大などであった。2006年には、カナダ・米国・西ヨーロッパを越えたネットワークの拡大が予定されている。

パンデミックインフルエンザワクチンの安全性の問題:委員会は以下の勧告を出した。(1)パンデミックインフルエンザワクチンの迅速な評価のためのガイドラインの策定、(2)そのようなガイドラインを、シーズンごとのインフルエンザワクチンの評価にまで拡大適用すること、(3)アジュバント含有不活化インフルエンザワクチンの安全性と有効性に関する信頼すべき評価。

アジュバントの安全性:既に認可されたインフルエンザワクチンに、スクアレンを含むアジュバントが使用されている。また、スクアレンはパンデミックインフルエンザワクチンのアジュバントの候補ともなっているため、その安全性の評価が重要である。

ロタウイルスワクチンの安全性:4価ロタウイルスワクチン(商品名RotaShield)の接種と腸重積との関連性について、最近米国から発表された研究の評価を行った。結論は以下の通りである。(1)その研究では、生後60日以降にRotaShieldの接種を受けた幼児では、ワクチン関連の腸重積の発症リスクが高いことが確認された。(2)生後60日以内にRotaShieldの接種を受けた場合、腸重積の発症リスクは低いと結論づけるには、十分なエビデンスは得られていない。(3)たとえ、早期にワクチンを接種することを厳守するよう勧告しても、多くの国の現場で実行するのは極めて困難であると思われる。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と麻疹ワクチン接種:麻疹ワクチン接種とSSPEの発生とに関連があると言われていることに関して、評価を行った。入手可能な疫学データからは、ワクチン接種で麻疹を予防することにより、直接的にSSPEの発生が防がれることが示唆されている。ワクチン接種により麻疹のコントロールが良好な国においては、麻疹罹患率の減少の数年後に、新規のSSPE症例の減少が見られている。疫学データからもウイルス遺伝子型のデータからも、麻疹ワクチンのウイルスがSSPEを発症しうることは示されていない。

慢性疲労症候群とB型肝炎ワクチン接種:B型肝炎ワクチン接種と慢性疲労症候群の関連の可能性について、カナダで発表されているが、その検討を行った。徹底した文献検索の結果、症例対照研究が3件あるのみであり、いずれの研究にも制限が認められた。委員会は入手可能なエビデンスに基づき、「関連を支持する根拠はない」と結論した。

結合型髄膜炎菌ワクチンとギラン・バレー症候群:最近米国では4価の結合型髄膜炎菌ワクチンの導入後に、ギラン・バレー症候群の数症例が報告されたが、報告された症例数は、その母集団で通常予想される症例数と同程度であった。そのため委員会は、ワクチン政策に変更を加えないことを推奨した。

(WHO, WER, 81, No.2, 15-19, 2006)

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