宮崎県におけるつつが虫病患者の発生状況

(Vol.27 p 30-31:2006年2月号)

宮崎県では中部以南を中心につつが虫病の患者が発生しており、2001年度〜2005年度(12月まで)にかけての発生状況を報告する。なお、血清学的確認および感染したOrientia tsutsugamushi の血清型の推定は、既報(IASR 22: 213-214, 2001)の方法で行った。

宮崎県の患者数は、数年の間隔で変動し、1998〜2000年度には年間70〜80名程度であったが、その後減少し、2004年度、2005年度には10名程度にまで激減した(図1)。また、県内では、2001、2002、2003、2004、2005年度にそれぞれ5、3、2、3および5名の日本紅斑熱の患者が確認されている。これら日本紅斑熱の患者は県の南東部を中心に発生したが、つつが虫病の患者は中部以南の広い範囲で散発的に発生した。

2001〜2005年度に確認された患者は128名で、このうち67%(86名)がKawasaki型、27%(34名)がKuroki型のO. tsutsugamusshi にそれぞれ感染したと推定された。6%(8名)については血清型を特定できなかったが、宮崎県では依然としてKawasaki型とKuroki型のO. tsutsugamushi がつつが虫病の主な原因となっている。また、Kawasaki型のKuroki型に対する患者の比率は年度により異なり、2001年度2.1(23/11)、2002年度4.6(23/5)、2003年度1.4(21/15)、2004年度11(11/1)、2005年度 4(8/2)であるが、従来通り、いずれの年度もKawasaki型の患者の占める割合が高かった。

2001〜2005年度に確認された患者128名の84%( 108名)が11月と12月の2カ月間に発生し、94%(120名)が10〜12月の3カ月間に発生していた。1991〜2005年度の15年間を3期間に分けて比較した場合、1991〜1995年度では11月に59%の患者が、12月に28%の患者が発生していた。同様に、1996〜2000年度では11月に54%が、12月に35%が発生し、2001〜2005年度では11月に46%が、12月に38%が発生していた。宮崎県では、ほぼ例年、11月をピークに9月末〜3月にかけて患者が発生するが、2003年度以降、発生時期が遅れる傾向を示している(図2)。

確認患者128名の男女比は 1.1:1( 67:61)で、差はなかった。また、患者の年齢層は10歳未満〜80代であったが、男女ともに50歳以上の占める割合が高く、男性で84%、女性で85%であった。

感染機会としては、農作業が最も多く、次いで多い山林での作業と合わせて感染機会の50%を占めていた。その他、山菜採り、狩猟、ハイキングなどのレクリエーションが主な感染機会であった。また、主な感染地域は山間部および農地で、65%以上の患者がこれらの地域で感染していた。

2001〜2005年度の確認患者の約6%で、感染したO. tsutsugamushi の血清型の推定が困難であった。宮崎県におけるKawasaki型やKuroki型のO. tsutsugamushi の媒介種はタテツツガムシと考えられるが、Karp型やGilliam型を媒介するとされるフトゲツツガムシの分布も確認されており、これらの型を原因とした患者が発生する可能性もある。実際、県内で感染した患者からKarp型(JP-2型)のO. tsutsugamushi が分離されており、感染した抗原型を推定できなかった症例については、PCR法に加えて、このような分離株を用いた血清診断法の検討も必要と思われる。また、この5年間の特徴として、発生時期が遅れ、患者数が激減した。その原因の解明や、今後の動向を推定するためには、他の地域における発生状況との比較も重要で、全国的な動向調査の充実が望まれる。

宮崎県衛生環境研究所
山本正悟 元明秀成 岩切 章 平崎勝之

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る