出前寿司が原因と推定されるノロウイルス食中毒事例−滋賀県

(Vol.26 p 340-341)

滋賀県N保健所管内で10月上旬にノロウイルスを原因とする食中毒事件が発生したのでその概要を報告する。

2005年10月10日、医療機関から食中毒様の症状を呈する患者を複数人診察したという連絡が管轄保健所にあった。保健所が調査したところ、これらの発症者は10月8日のM市で催された地元の祭りに参加しており、祭り参加者37名中16名が発症、夕食としてN市内の飲食店が提供した寿司を喫食していた。また、同日、この施設が提供した寿司を食べた別グループ、14グループ(80名中41名)にも有症者がいることが判明した。その後の調査で、翌日の10月9日に調製された寿司を喫食した17グループ(115名中17名)も発症していることがわかった。

患者12名、従事者2名、その家族3名(子供を含む)の糞便、および残食の寿司4件についてRT-PCR法によるノロウイルスの検出を行った結果、患者12名中9名、従事者および家族5名中5名がgenogroup (G) II陽性となった。しかし、食品からは検出されなかった。COG2F/G2SKRの増幅産物についてダイレクトシークエンスを行った結果、 GII/3型(AR type)に属し、シークエンスが可能であった11株はCapsid領域287baseが100%一致した。

保健所の調査の結果、飲食店の従事者家族である子供(1歳)がこの事件以前に下痢等の症状を呈しており、また、その当該日は繁忙日で、従事者家族(母親)も調理補助員として寿司を調製していたことがわかった。患者便および従事者家族便(子供)から検出された株の遺伝子型が一致していることから、その子供を発端として他の従事者も感染し、子供の世話をしていた従事者家族によって調製された寿司が、手指の洗浄不足等によりノロウイルスに汚染されたものと推測された。

滋賀県衛生科学センター・微生物担当
長谷川嘉子 田中千香子 大内好美 井上朋宏
滋賀県長浜保健所・生活衛生課
澤 英之 大橋久治

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