Diffuse outbreakが疑われたSalmonella Braenderup 株の解析結果

(Vol.26 p 341-342)

2005年9月中旬、石川県にてSalmonella Braenderupによる散発事例が5件報告された(うち1件は家族内発生事例を含む)。同県によるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンの解析結果では5件とも同一パターンを示した。一方、大分県でも8月下旬以降S . Braenderup感染事例が20件以上報告された。このことから、各地で分離されたS . Braenderup株の関連性を調べるため、地方衛生研究所(地研)と検疫所の検査情報担当者メーリングリスト(感染症情報センター)およびパルスネット(細菌第一部)の電子メールネットワークを利用して、2005年8月1日以降に分離されたS . Braenderupの患者由来菌株の提供を依頼し、PFGEによる解析を行ったので、ここに報告する。

2005年11月14日現在、石川県、名古屋市、大分県、宮崎県、富山県、福井県、鹿児島県、山口県、長崎市の計9地研から計43株のS . Braenderupが送付された。各菌株についてXba I消化によるPFGEパターンの解析を行った。その結果、同じ地研に由来する株どうしに関しては、すべて同一のPFGEパターンを示した。図1に各地研の代表株についてFingerprinting IIソフトウェアによる解析結果をまとめたものを示す。異なる地研由来の株どうしに関しては、石川県、富山県、福井県、鹿児島県、および長崎市からの分離株の泳動パターンに違いは観察されなかった。一方、その他の4地研からの分離株については、それぞれ異なる泳動パターンを示した。

なお、これまでのところ、各菌株について感染源に結びつくような情報は得られていない。

2001年以降のS . Braenderup分離報告数(頻度、血清型別順位)は以下の通りである:2001年70(2.5%、6位);2002年17(0.8%、11位);2003年14(0.6%、12位);2004年11(0.8%、13位)(http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/salm2003.gifhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/salm9300.gif参照)。この数字からすると本年は過去3年に比べて報告数が多いと思われるが、すべての地域でPFGEパターンが一致したわけではないので、現状では明らかな全国的流行とは考えにくい。一方で、一部菌株については分離地域に関係なくPFGEパターンに違いが見られないことから、これらに関しては共通の感染源の存在も疑われる。しかしながら、サルモネラでは伝播を経てもPFGEパターンがあまり変化しない場合があり、疫学情報も含めた上でデータを吟味する必要がある。

謝辞:情報提供いただいた全国地研、保健所等の先生方、特に菌株収集に協力していただいた以下の諸先生方(敬称略)に深謝いたします。

石川県保健環境センター 倉本早苗
大分県衛生環境研究センター 緒方喜久代
名古屋市衛生研究所 木戸内 清
宮崎県衛生環境研究所 河野喜美子
富山県衛生研究所 磯部順子
福井県衛生環境研究センター 京田芳人
鹿児島県環境保健センター 上野伸広
山口県環境保健研究センター 富永 潔
長崎市保健環境試験所 植木信介
国立感染症研究所・感染症情報センター 山下和予

IASR編集委員会註:上記PFGEパターンのいずれも本号20ページ掲載の船橋の事例(症例1)のS . Braenderup株のものとは一致していない。

国立感染症研究所・細菌第一部 泉谷秀昌 寺嶋 淳 渡辺治雄

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