ヒトパピローマウイルスワクチンに関するWHO協議

(Vol.26 p 347-347)

子宮頚癌については、全世界で毎年およそ50万人の新規患者と約24万人の死亡例が報告されており、うち80%は途上国で発生している。子宮頚癌の99%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染と関連するとされている。HPVには100以上の遺伝子型が存在しており、その中には腫瘍原性を示すものが知られている。また、扁平上皮子宮頚癌からは16および18型が最も高い頻度で検出されている。HPV感染のピークは思春期層から25歳以下の若年女性に認められ、通常は自然消退するが、消退せずに前癌状態を経て20〜30年で発癌することもある。先進国では、細胞診を用いた早期診断・早期治療が子宮頚癌による死亡者数の減少に寄与しているが、これは費用がかかる方法である。一方、HPVワクチンは子宮頚癌の発生率を減少させる実際的かつ安価な方法として期待されており、2〜3年以内に認可されることが見込まれている。

ワクチン抗原は主要キャプシド蛋白質L1の自律集合で形成されるウイルス様粒子で、DNAは含まれない。現在2製品について15〜25歳の女性を対象に、中〜高度前癌病変を予防する効果の有無を判定するための多施設臨床試験が行われている。両ワクチン抗原とも16型および18型を含み、一つは生殖器のイボの原因となる6型および11型も含んでいる。ともに3回投与のスケジュールで、2006年までには少なくとも1つのワクチン製造業者から、15〜25歳の女性に対するワクチンの有効性に関するデータが出される見込みである。ワクチンは同年齢層を対象に認可される可能性があるが、より幅広い年齢層での免疫原性のデータが認められれば、それらの広い年齢層も対象になる可能性もある。

特に重要な必要事項として、それぞれの国が子宮頚癌とHPVワクチンに関する地域の知識および姿勢を評価するツールキットと、種々の状況でのワクチンの効果について認可後の評価を行なう方法の開発が挙げられる。ワクチンの製造コストは不明であるが、将来、新興の製造業者に技術移転する可能性も検討する必要がある。また、国レベルでのワクチン導入の可否、包括的子宮頚癌コントロールプログラムにおけるワクチンの位置付け、ワクチンプログラムのモニターおよび評価方法などの決定を手助けするためのガイドライン策定が必要である。HPVワクチンは、子宮頚癌の罹患および致死率を低下させるための方法の一つであり、必ずしもスクリーニングや早期治療に取って代わるものではないであろう。WHOはワクチン導入に関するガイドライン策定のために、種々のパートナー、地域、国々と協議しつつ、国際的かつ学際的な政策要綱を策定する予定である。

(WHO, WER, 80, No.35, 299-302, 2005 )

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