国内産生食用カキのノロウイルス汚染状況

(Vol.26 p 335-337)

市販生食用カキのノロウイルス(NV)汚染状況について、4シーズンにわたり調査を行い、検出したNVの分子疫学的解析を行った。

供試カキ

2001年10月〜2002年4月(2001/02シーズン) 207、2002年10月〜2003年4月(2002/03シーズン)209、2003年10月〜2004年4月(2003/04シーズン)291、2004年10月〜2005年4月(2004/05シーズン)145、計852パックの国内各地の市販生食用カキを用いた。

方 法

厚生労働省通知に基づき、切り出したカキの中腸腺からウイルスRNAを抽出した。ランダムプライマーを用いて合成したcDNAを用い、リアルタイムPCRで定量し、実測値で10コピー(中腸腺1個当たり125コピー/個)以上をNV陽性とした。

2001/02シーズンは1パックにつき5個をプールして行い、2002/03〜2004/05の3シーズンはカキが保有するNV量の個体差を明らかにするため、1パックにつき3個を個別に検査した。また、RT-PCR(COG1F/G1-SFR→G1-SKF/R、COG2F/ALPF/G2-SFR→G2-SKF/R/G2AL-SKR)で陽性のものはキャプシド領域の塩基配列を決定して分子疫学的解析を行った。

成績および考察

1.NV検出状況:汚染率は2001/02シーズンが11.1%(23/207パック)、2002/03シーズンが11.0%(23/209)、2003/04シーズンが7.2%(21/291)、2004/05シーズンが11.7%(17/145)で、4シーズンでは 9.9%(84/852)であった。シーズンにより月別汚染率は異なっていたが(図1)、 1,000コピー/個以上の高濃度汚染はいずれのシーズンも12〜2月の間にみられた。

厚生労働省食中毒統計(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.html)の原因食品がカキと推定されたNVによる食中毒事件の発生数と今回の市販カキのNV汚染状況を比較すると、汚染率、汚染濃度が上昇すると食中毒事件数も増加する傾向があり、両者の間に強い関連性が認められた(図1)。

個体別に検査した645パックのうち、陽性を示したパックの大部分には陽性と陰性の個体が混在し(表1)、定量値も個体ごとに異なる場合が多く、中には高濃度汚染個体と陰性個体が混在するパックも認められた。さらに検査個体数を増やすと検出率が増加した(未発表データ)。

2.検出NVの遺伝子タイプ:シーズンでGenogroup (G)Iは8種類、GIIは10種類の遺伝子タイプが検出され(表2)、GIとGIIの検出率はほぼ同程度であった。

GI/4およびGI/7タイプは2001/02〜2003/04シーズン、GI/12およびGII/5タイプは2002/03〜2004/05シーズン、GII/3タイプは2001/02、2003/04、2004/05シーズン、GII/4タイプは2001/02、2002/03、2004/05の3シーズンに検出された。なお、GIIのC-34[AY353927]は新しい遺伝子タイプと考えられるものである。

考 察

カキがノロウイルスに汚染されている時期にはカキを介する食中毒事件が多く起きていることから、この時期にはカキの生食は控える等の注意が必要である。また、カキの安全性を評価するには1パック当たりの適正な検査個数についての検討が必要と考えられた。さらに、カキからGIが多く検出されており、それらの遺伝子タイプの病原性等については今後検討したい。今シーズンも引き続き調査を行っている。

山口県環境保健研究センター 西田知子 岡本玲子
広島市衛生研究所 野田 衛
広島県保健環境センター 福田伸治
青森環境保健センター 三上稔之
埼玉県衛生研究所 篠原美千代
愛媛県立衛生環境研究所 大瀬戸光明 山下育孝
大阪市立環境科学研究所 入谷展弘
宮城県保健環境センタ− 植木 洋
国立感染症研究所 秋山美穂 愛木智香子 西尾 治

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