ルーマニアにおける水痘:1986年〜2004年の疫学的傾向

(Vol.26 p 276-277)

ルーマニアでは水痘は届け出疾患となっており、また水痘ワクチン(GSK Varilrix)は1998年以降、生後9カ月以上の小児と、高度に免疫力の低下した患者などのハイリスクの患者、およびその家族や医療従事者に対して任意接種が行われている。

人口10万人当たりの水痘の発生は1986年の110人から、1995年には369人にまで増加した。1996年にはやや減少したが、依然として1990年以前のレベルよりは高い状態が続いている。2001年には人口10万人当たりで310人と、急激な増加を示している。それ以降も200人以上のレベルを保っており、2004年には316人であった。水痘の発生率は過去20年で3倍になったが、この増加は報告システムの改善に起因していると考えられる。2000〜2004年に報告された300,477例のうち、49%は10歳未満で、77%は15歳未満であった。一方、15歳以上が23%を占めており、成人例も無視はできない。

2003年1月〜2004年12月の間に、1特定病院に入院した371人(0〜14歳198人、15歳以上の成人173人)の水痘患者に対し、遡り症例調査が行われた。年齢構成では10歳以下が36%と、21〜30歳が26%という2つのピークが確認された。合併症を1つ以上発症していたために入院となった患者は53%であるが、入院した患者の比率は、成人(33%入院)よりも小児(66%入院)の方が高かった(p<0.05)。最も多い合併症としては、小児では皮膚の細菌感染症が29%、間質性肺炎が18%、成人では血小板減少が13%、皮膚の細菌感染症が9%であった。脳炎、小脳失調、脊髄炎のような重篤な合併症が認められたのは成人のみであり、非常に稀であった。

ルーマニアでは現時点で、水痘ワクチンの定期接種化は政策上あまり重要視されていないが、MMRV4価ワクチンが導入されれば、水痘ワクチンの接種が増えると思われる。

(Eurosurveillance Weekly 10, Issue 32, 2005)

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