沖縄県の手足口病の流行状況とウイルス分離状況

(Vol.26 p 240-241)

本県の2005年感染症発生動向調査における定点当たりの手足口病患者報告数は、第16週から1.94人と増加傾向を示し、第19週に6.53人と警報開始基準値(5.0人)を超え、第20週〜第23週に10.03〜11.06人とピークを迎え、第29週には0.94人と減少し終息に向かった(図1)。

保健所ごとの定点当たりの患者数では、県南部保健所管轄内で警報開始基準値を超えたのが第17週で、2週間後の第19週では本島内のすべての保健所管轄内(中央、中部、北部)で警報値を超えた。その後、4週遅れて第23週には先島の宮古、八重山保健所管轄内でも警報開始基準値を超えた(図2)。週別患者数の年齢構成は、例年と変わらず3歳以下の幼児で8割以上を占めていた(図3)。

病原体検査は、感染症発生動向調査の一環として、定点当たりの患者報告数ピーク時の第21週〜第22週に南部・中央・中部保健所管轄内の定点医療機関5機関から搬入された咽頭ぬぐい液26検体と、流行後半の第25週〜第26週に北部保健所管轄内の定点医療機関1機関から搬入された咽頭ぬぐい液6検体、合計32検体について、当所で4種類の細胞(HEp-2、RD、Vero-E6、HeLa)に接種しウイルス分離を行った。その結果、ピーク時の26検体中13検体と流行後半の6検体中3検体の計16検体に、継代2代目にVero-E6細胞でCPEがみられ、Vero-E6細胞を用いて福岡県保健環境研究所(エンテロレファレンスセンター)より分与された抗血清により中和試験を実施したところ、A群コクサッキーウイルス16型(CA16)で中和された(表1)。

以上のことから、今回の手足口病の流行はCA16が主原因であったと推測された。

本県は、日本の最南西端に位置し、近隣諸国には台湾や中国等がある。台湾においては毎年エンテロウイルス71型(EV71)による手足口病が流行しており、今年もEV71の流行により幼児の死亡者がProMED情報に報告されていることから、本県としては、今後EV71による手足口病の発生動向に留意し、監視を強化していく必要があると思われる。

沖縄県衛生環境研究所 糸数清正 平良勝也 仁平 稔 久高 潤 大野 惇
沖縄県感染症情報センター 下地實夫 賀数保明

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