今シーズンのヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況−愛知県

(Vol.26 p 178-178)

愛知県の患者発生情報によると、今シーズンのヘルパンギーナ患者報告数はほぼ例年どおりで、第23週で定点あたりの報告数は2.0を超えている。検査定点から得られた12名のヘルパンギーナ患者のウイルス検査を行ったところ、5名からコクサッキーウイルスA6型(CA6)が、2名からCA10が検出されたので報告する。

患者は愛知県北部の2つの医療機関を受診した12名で、材料は咽頭ぬぐい液が11件、糞便が2件であった。発症日は2005年4月5日〜5月13日で、年齢は4カ月〜4歳7カ月であった。これら材料をRD-18S細胞に接種するとともに、RT-PCR法にてウイルス遺伝子の検出を試みた。RNA抽出はRocheのキットを用いて行い、1st PCRはPromegaのAccess Quick RT-PCR SystemにてMD91(+)/OL68(-)プライマーを用いて行い、2nd PCRにはEVP4(+)/OL68(-)プライマーを用いた。増幅された遺伝子は精製後、pGEM-Tベクターに組み込み、塩基配列を決定した。

ウイルス分離はすべて陰性であったが、12名中7名からウイルス遺伝子が検出された。塩基配列を調べたところ、5名はCA6で2名はCA10であった。各々のウイルスは相同性が99%と、ほぼ同じウイルスで、CA6は2003年の流行株(03-10032)と近縁で、CA10は2005年1月に検出された株(04-10440)と同じで、2000年に検出された株(00-10719)と近かった()。

2000年からのウイルス検出成績をに示した。当所では2000年〜2003年までは乳のみマウスによるウイルス分離検査を行っていた。しかし、中和反応と遺伝子型別で同じ結果が得られ、乳のみマウスによるウイルス分離とVP4領域を標的とするnested PCR法で検体から直接遺伝子を検出する方法が同等の検出成績であった。

CA6は2000年と2003年に検出数が多く、今年も流行の主流となる見込みである。コクサッキーA群ウイルスの流行は比較的地域に偏りがあるが、過去2回のCA6の流行では、県内各地の患者から広く検出されている。今年の患者はまだ県北部の患者のみであるが、今後各地の患者からCA6が検出されると予想される。CA10は少ないながらも毎年検出されている。遺伝子で比較すると両ウイルスは近い関係にあるが、流行様式は異なる模様である。

愛知県衛生研究所 山下照夫 伊藤 雅 谷口晶子 榮 賢司

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