野生株ポリオウイルス伝播の抑止への進捗状況、 2004年1月〜2005年3月

(Vol.26 p 182-182)

ポリオ根絶を目指す1988年の世界保健総会決議以降、ポリオ常在国は 125カ国から2003年末の6カ国(ナイジェリア、ニジェール、インド、パキスタン、アフガニスタン、エジプト)にまで減少した。しかし、2003〜2004年にナイジェリアおよびニジェールのポリオ常在地域から、すでにポリオが根絶された14カ国へ伝播した。これにより、アフリカの6カ国(ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、チャド、コートジボワール、スーダン、および2005年のマリ)では地域流行が再発している。本報告は、2004〜2005年3月の世界におけるポリオ根絶へ向けた取り組みについて概括する。

世界の小児における定期経口ポリオワクチン3回接種達成率(OPV3)は、2003年では78%と推定されている。WHOアフリカ地域では61%、ポリオ常在国では、ナイジェリア39%、ニジェール51%、インド70%、パキスタン69%、アフガニスタン54%、エジプト98%と推定されている(いずれも2003年)。集団における免疫を向上させるため、5歳以下の幼児に追加で予防接種を行う強化予防接種活動(SIAs)は、2004年に44カ国(ポリオ常在国6カ国、再発生国5カ国、輸入例発生国7カ国、輸入例発生の危険性がある国26カ国)で実施され、3億7,200万人の小児に接種を行った。

ナイジェリア北部のカノ州では、OPVの安全性に関する根拠のない噂が流れたために停止されていたSIAsが、2004年7月におよそ12カ月ぶりに再開された。アフリカにおけるポリオの再興に対し、2004年10月および11月には、西および中央アフリカの23カ国ならびにスーダンにおいて、時期を同じくした予防接種活動が2回実施され、8,000万人の小児に接種を行った。

急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランスは2つの指標により評価されるが、それは15歳未満人口10万人あたり、非ポリオAFPの報告が1例以上あること、および、それらの症例の80%以上から適切な便検体が採取されることである。世界全体での非ポリオAFP率は、2003年の1.9から2004年の2.3へと増加した。適切な便検体の採取率は86%に止まった。

野生株ポリオウイルス(WPV)によるポリオ症例数はアジアからの報告が減少した一方(2003年の336例から 2004年の193例)、世界全体では2003年の784例から 2004年の1,266例へと増加した。これは主にナイジェリアでの増加(2003年の355例から2004年の792例)、および2004年末に起きたスーダンでの集団発生(126例)によるところが大きい。

アジアにおけるWPVの伝播は、アフガニスタン(カンダハール)、インド(西ウッタルパラディッシュおよびビハール州の一部)、およびパキスタン(南パンジャブおよびシンディ州)の特定地域にほぼ限局している。

(WHO, WER, 80, No.17, 149-155, 2005)

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