幼稚園から学校の児童に及ぶ腸管出血性大腸菌O111による集団感染事例−郡山市

(Vol.26 p 147-147)

2004年10月末〜12月にかけて郡山市内の幼稚園に通う園児、さらに近くの小学校に及ぶ腸管出血性大腸菌(EHEC)O111の集団感染が発生したので概要を報告する。

10月30日(土)に市内の医療機関から5歳の幼稚園男児のO111 VT1&2産生株によるEHEC感染症の発生届が保健所に提出された。

保健所による園児の家族と園児が通う幼稚園について接触者調査を行い、園児の弟と同じ組の園児1名に下痢症状が確認されたため便検査を実施したところ、O111 VT1&2産生株が検出された。そのため、全幼稚園児と職員、園児と接触のある学童保育児について便検査を実施した。その結果、初発の園児1名を含む 269名中9名からO111 VT1&2産生株が検出された。なお、職員23名からは検出されなかった。さらに菌陽性となった園児家族の接触者調査を実施したところ、34名中2名からO111 VT1&2産生株が検出された。

また、11月10日(水)、当該幼稚園と同地区にある小学校の児童2名について医療機関よりO111 VT1&2産生株によるEHEC感染症の発生届があったため、当該児童と同じクラス全員の便検査を実施し、あわせて全児童の健康調査を行ったところ、下痢症状を訴える児童がいたため、全児童および職員の便検査を実施した。その結果、児童 699名中11名からO111 VT1&2産生株が検出されたが、職員からは検出されなかった。なお、陽性者11名の内訳は2年生が8名(うち5名が同じクラス)、1年生が1名、3年生が1名、4年生が1名であった()。幼稚園と小学校の感染経路については兄弟関係等から調査したが、特定できるものはなかった。

分離されたEHEC O111 VT1&2産生株26株のうち、23株について福島県衛生研究所へパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)による解析を依頼したところ、図1に示すとおりすべての菌株が同一のパターンを示し、これらの施設での集団感染例では単一のクローンによる感染であり、両者の関連が強く示唆される結果となった。なお、2004(平成16)年度の郡山市における別事例および福島県内で分離されたEHEC O111とはPFGEのパターンは異なっていた(図2)。

お忙しい中、快くPFGEによる解析を実施してくださった福島県衛生研究所微生物グループ細菌担当の皆様方にはこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

郡山市保健所・地域保健課
       検査課

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