高齢者施設におけるノロウイルス感染症の年齢別発症率の比較

(Vol.26 p 123-124)

近年、高齢者施設におけるノロウイルス感染症の流行が問題となっている。2005年1月12日に厚生労働省が発表した全国実態調査によると、2004年11月〜2005年1月12日現在までに、発症者は5,371人、死亡者は12人である。この冬は特に高齢者施設での発生報告が相次いでおり、抵抗力の弱い高齢者への注意が呼びかけられているところである。

2004年1月5日〜2005年1月24日の期間に、茨城県潮来保健所、土浦保健所および竜ヶ崎保健所管内において、RT-PCR法(平成15年11月5日付厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知「ノロウイルスの検出法について」に準拠)により発症者便からノロウイルスを検出し、ノロウイルス感染症と判断された老人福祉施設が4施設あった。そこで、これらの施設の入所者327名(79歳以下115名、80〜89歳146名、90歳以上66名)について、年齢別で発症率に違いがあるかどうかを調査した。ここでは発症者を、当該期間中の発症者のうち、客観的に判断できる下痢または嘔吐を呈した者に限定した。また、年齢による発症率の差の検定を統計処理ソフト「Dr.SPSSII」を用いたMann-WhitneyのU検定で実施した。

入所者数、下痢および嘔吐の発症者数、および発症率を年齢別に表1にまとめ、その発症率と年齢との関係を図1に示した。90歳以上はそれ以下の年齢群と比較して下痢と嘔吐の発症率が高かった。Mann-WhitneyのU検定の結果は、表2のとおりであり、嘔吐については80代以下と90歳以上の間において有意水準5%で有意差がみられた。施設ごとの観察では有意差はみられなかったが、90歳以上で嘔吐の発症率が高いという全体の観察と同様の傾向が観察された。

今回の調査だけから結論づけることはできないが、施設内のノロウイルス感染症では90歳以上の高齢者で発症率が高い可能性があり、ケアにおいて注意が必要である。

茨城県潮来保健所 秋月美佳 緒方 剛
茨城県土浦保健所 中川和江
茨城県竜ヶ崎保健所 加藤達也
自治医科大学・公衆衛生学教室 中村好一

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