川崎市エイズ日曜検査・相談事業の実施状況

(Vol.26 p 115-116)

川崎市のHIV検査事業の経緯

川崎市では、1987(昭和62)年2月より、市内7保健所において平日にHIV抗体検査を実施している。また1995(平成7)年4月からは、日曜日にエイズ日曜検査・相談事業(以下「日曜検査」)を開設し、受検者のライフスタイルにあわせた利便を図っている。さらに2001(平成13)年4月より、日曜検査の受検者に対しインフォームドコンセントを経て、HIVウイルス遺伝子検査(以下「NAT検査」)を厚労省「HIVの検査法と検査体制を確立するための研究班」より研究依頼され実施し、HIV感染者の早期発見に努めている。以下、日曜検査の実施状況について、発生動向と受検者の属性を中心に報告する。

日曜検査の概要

日曜検査は匿名・無料・予約なしで、JR川崎駅前の健康・検診センターの診療所を借り上げ、毎日曜日(年末年始は除く)午前10時〜12時、午後1時30分〜3時30分まで開設している。従事者(医師1名、看護師2名、事務職1名)は雇い上げとし、当課で日程の調整を行っている。検査日の流れは、受付でHIV検査申込書を記入し、待合室で予防啓発用のビデオを見る。問診票を基に医師による検査の情報提供と事前カウンセリングを行い、同意のうえ検査を実施する。結果の告知は1週間後に、受付で受検者本人を確認し、医師による予防相談のなかで行っている。また、陽性者への告知に際しては、対応する専門の医師を1名配属している。

検査件数・陽性件数・陽性率

1回平均29.1人(2004年)が受検しており、12月の世界エイズデー月間には1回50人以上が受検し、検査結果の告知と合わせると1回100人以上が来所する。年間の検査件数と陽性件数の年次推移は、図1のとおりである。検査件数は、2001年にNAT検査を導入し、抗体検査に比べて感染後の早い時期に受検できるようになったこともあり、検査件数は2002(平成14)年以降は1,000件を超え増加の傾向がみられる。2004年は過去最高の1,484件であった。陽性件数は2001年以降は増加傾向にあり、保健所検査を合わせた川崎市全体の陽性件数の約81%を占めている。陽性率をみると、表1のとおり保健所の0.13%に対し日曜検査は0.38%と高く、感染の心配が高い対象が受検していると思われる。日曜検査の陽性件数35件の内訳は、全員が感染者(AIDS未発症者)で、性別は男性が91%、年齢別では20代が49%、30代が46%、国籍は83%が日本人、感染原因別では同性間性的接触69%、異性間性的接触26%である。なお、2004年にはNAT検査が陽性で抗体検査が陰性のケースが1件あった。

受検者の属性・行動の実態

受検者全員に医師による事前カウンセリングを行い、受検者の属性や行動の実態を問診により把握している。2003(平成15)年度の受検者1,332名の属性は表2、感染を心配する原因は表3のとおりである。男女比は約4:1、年齢別では20代が46%、30代が40%で受検者の86%を占めている。居住地別では、川崎市内が38%に対し、川崎市以外が約61%と多く、利便性の高い場所で開設している特徴と思われる。職業別では、会社員・公務員が67%で、平日に検査を受けにくい対象が多く利用している。また日曜検査のリピーターが19%、その他の検査場所で受けたが15%だった。感染を心配する原因を聞いた項目では、異性間性的接触が79%、同性間性的接触が6.2%、相手が不特定15%、性風俗43%。コンドームの使用については「始めから使用する」が25%に対し、「時々・途中から・始めから使用しない」など正しく使用しないケースが56%で、セーファーセックスの普及啓発のさらなる強化が課題と思われる。

現在、2004年度分データの集計中で、日曜検査の問診も継続している。検査は、HIV感染のリスクを軽減するために予防の情報や相談(カウンセリング)を提供する有効な機会であり、HIV感染報告件数の多い年齢層への予防啓発の場として重視している。また南北に長い川崎市の地域性を考え、利便性の高い検査・相談について来所者にアンケート調査等を実施し、受検者の動向をみながら受検しやすい環境づくりを検討しているところである。

川崎市健康福祉局保健医療部疾病対策課 福土律子 泉 基広 泉谷 博

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