Strep-EURO: 2003〜2004年ヨーロッパでの重症A群レンサ球菌感染症の解析

(Vol.26 p 102-102)

Strep-EUROプロジェクトでは2002年9月より、重症A群レンサ球菌(GAS)感染症に関する情報収集を開始したが、これまでにドイツ、キプロス、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ギリシャ、イタリア、ルーマニア、スウェーデン、英国の11カ国から情報が寄せられている。

当初、ヨーロッパにおける定義である、1)血液などの本来無菌部位からGASが採取された症例、あるいは2)無菌部位以外からGASが採取されても、レンサ球菌性毒素性ショック症候群(STSS)や壊死性筋膜炎の臨床診断を受けている症例、についての臨床情報や疫学情報が収集されていた。

2003年1月からは侵襲性GAS 感染症のサーベイランスが強化され、分離株に対しては血清学的タイピング(T、OF、M型別)、分子解析[emm シークエンス、スーパー抗原や薬剤耐性遺伝子の検出、PFGEパターンの比較、multilocus sequence typing(MLST)]が実施されている。

最初の18カ月間で5,000例を超える報告がみられた。うち3,000例が英国で、発生率は10万人当たり3.8例であり、スウェーデン、デンマーク、フィンランドからも同様な率の報告があったが、他の国ではかなり低かった。いくつかの国では1、3、28型が主流であったが、全体として侵襲性GASの新しいタイプ(emm 77、81、82、89)の増加が目立っている。フランス、イタリアではMLS 抗菌薬(マクロライド、リンコサミド、ストレプトグラミンB)耐性の報告が多く、ほとんどの国でテトラサイクリン耐性が高頻度に確認された。英国では静注薬物使用(IDU)が主要危険因子と確認され、フランスでは、28型でMLS 抗菌薬およびバシトラシンに耐性を有し、分娩後敗血症と関連のあるGASの1クローンの広がりが報告された。

本プロジェクトは、EU加盟国(候補国を含む)における重症GAS感染症についての疫学的解析や研究の受け皿となってきたが、各国間の発生率に差が生じている理由として、いくつかのことが考えられる。今後、早急に行うべきことの一つとして、PFGEとMLSTによる解析の標準化が挙げられるが、これにより、検査施設間での株についての相互検討や追跡が効率よく行われるようになる。また、DNAシークエンスに基づいてemm 型別決定を明確に行えるかどうかにつき、詳細に評価することも必要である。また、テトラサイクリンはこの疾患の治療に使われていないにもかかわらず、耐性が維持されていることについても、さらに研究する必要がある。

(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 5, 2005)

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