2004/05シーズンのB型インフルエンザウイルス分離状況−札幌市

(Vol.26 p 71-72)

札幌市における2004/05シーズンのB型インフルエンザウイルスの流行は、昨シーズンに引き続き、山形系統が主流を占めているが、2005年1月24日(第4週)に採取された咽頭ぬぐい液から、今シーズン最初のVictoria系統のB型インフルエンザウイルスが分離されたので、その概要について報告する。

患者報告数:2004年第46週(11月8日〜14日)に2004/05シーズン初めて3名の患者発生報告があった。その後、2005年第4週(1月24日〜30日)に流行開始の指標とされる定点当たり患者数が1に達し、第6週(2月7日〜13日)には流行発生注意報の基準値(10)を超えて18.9となり、患者数が急増した(図1)。

ウイルス分離状況:市内定点医療機関(小児科10定点、内科4定点)を受診した患者から採取された咽頭ぬぐい液等を検査材料としてウイルス分離を行った。検査材料をMDCK細胞に接種してCPEが確認された培養液について、0.75%モルモット赤血球を用いてHA価を測定後、国立感染症研究所より分与された2004/05シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行った。

札幌市において今シーズン初めて分離されたインフルエンザウイルスは、2004年12月29日(第53週)採取の咽頭ぬぐい液から検出したAH3型であった。一方、B型インフルエンザウイルスは、2005年1月21日(第3週)に採取された咽頭ぬぐい液から山形系統株が初めて分離された。その後、分離数は増加し、2月22日現在までにAH3型が37株、B型が60株分離されている(図2)。

B型60株のうち、山形系統が54株、Victoria系統が6株である。今シーズン最初に分離されたVictoria系統のウイルスは1月24日(第4週)に採取された咽頭ぬぐい液からで、第4週(1月24日〜30日)に2株、第5週(1月31日〜2月6日)に3株、第6週(2月7日〜13日)に1株分離され、第7週(2月14日〜20日)については今のところ分離されていない。また、患者はすべて同一の小児科定点医療機関を受診しており、年齢は12〜15歳であった。

これらのB型分離株は、抗A/Moscow/13/98(H1N1)(ホモ価 2,560)、抗A/NewCaledonia/20/99(H1N1)(同 640)、抗A/Wyoming/03/2003(H3N2)(同 640)各フェレット感染血清でいずれもHI価<10を示した。山形系統株については抗B/Johannesburg/5/99羊高度免疫血清(同 2,560)でHI価 1,280〜 2,560、抗B/Brisbane/32/2002羊高度免疫血清(同 640)でHI価20〜80を示した。一方、Victoria系統株については、抗B/Johannesburg/5/99羊高度免疫血清(同 2,560)でHI価10〜20、抗B/Brisbane/32/2002羊高度免疫血清(同 640)でHI価 160〜 320を示した。

昨シーズンは全国的にAH3型が大部分を占めていたが、少数分離されたB型は2シーズンぶりに山形系統が主流であった。本市における昨シーズンのインフルエンザ流行状況は、AH3型とB型の混合流行であり、シーズン前半にA型が、後半にB型が流行する傾向がみられたが、今シーズンについては、比較的早い時期からAH3型とB型が混合流行しており、また、第4週以降はB型が主流となっている(図2)。B型ウイルスについては、昨シーズンに引き続き山形系統が主流を占めているが、ビクトリア系統が少数ではあるが分離されたことから、今シーズンのB型ウイルスの今後の動向に注目したい。

札幌市衛生研究所
宮北佳恵 菊地正幸 吉田靖宏 土屋英保 大川一美 藤田晃三

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