感染性胃腸炎患者の髄液からRT-PCRによりA群ロタウイルス遺伝子を検出した2事例について−岐阜県

(Vol.26 p 13-14)

冬季の感染性胃腸炎の起因ウイルスとしてロタウイルスは重要なウイルスであるが、感染性胃腸炎と診断された2人の髄液からRT-PCRによりA群ロタウイルス(ロタウイルス)遺伝子を検出したので、同時期に感染性胃腸炎と診断された岐阜県内の患者の検査結果も併せて報告する。

発生状況:感染性胃腸炎患者は表1に示したように2003(平成15)年11月〜2004(平成16)年1月に発生しており、患者Aは胃腸炎症状のみを示したが、患者Bは胃腸炎症状とともに痙攣症状を示していた。患者Cは胃腸炎発症後心肺停止を起こし死亡。患者Dは患者Cの双子の兄弟でCの発症2日後に同様の胃腸炎を発症した。

検査方法:感染性胃腸炎の検査は、患児の年齢、季節、軽い発熱等の症状を考慮してロタウイルスおよびノロウイルスを対象として実施した。ロタウイルスは逆受身血球凝集反応(RPHA)およびGouveaら1)のprimerを用いてRT-PCRを実施した。ノロウイルスについてはCOG1F/G1SKR、COG2F/G2SKR primerを用いてRT-PCRを実施した。

検査結果:検査結果は表2に、ロタウイルスRT-PCR泳動結果は図1に示した。

ロタウイルスRPHA検査では、患者Dの糞便は陽性であったが、患者C糞便は凝集価が8と低く陽性判定はできなかった。RT-PCR検査では、患者4人中3人からロタウイルス遺伝子が検出された。患者BとCは髄液より遺伝子が検出され、患者CとDは糞便より遺伝子が検出された。血清型はすべてG3であった。

ノロウイルス遺伝子は患者Aの糞便検体からのみ検出された。

髄液からのRT-PCRによるロタウイルス遺伝子の検出は、牛島2)、篠崎3)、本郷ら4)により報告されている。

ロタウイルスによる感染性胃腸炎が時として痙攣等の神経症状を伴うことから中枢神経へのウイルスの侵襲が疑われている。しかしde Villiersら5)は神経症状の無い患者の髄液からロタウイルス遺伝子の検出を報告しており、痙攣等の神経症状とウイルスとの関連は明確にされていない。

しかし今後は冬季の髄膜炎患者、痙攣を伴った感染性胃腸炎患者の髄液のロタウイルス遺伝子検索は必要であり、それにより検出事例が増えると思われる。

 文 献
1) Gouvea V, et al., J Clin Microbiol 28:276-282 ,1990
2) Ushijima H, et al., J Clin Microbiol. 32: 2893-2897, 1994
3)篠崎ら,千葉衛研報告 21: 23-24, 1997
4) Hongou K, et al., Pediatr Neurol 18(4): 354-357, 1998
5) de Villiers FP, et al., Ann Trop Paediatr 23 (4) : 309-312, 2003

岐阜県保健環境研究所 猿渡正子 青木聡 野田伸司 所 光男

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