G血清型・P遺伝子型解析からみたロタウイルスの流行疫学、1999〜2004−奈良県

(Vol.26 p 6-7)

ロタウイルスは冬季に小児が罹患する感染性胃腸炎の主要な原因ウイルスである。ウイルス表面には2種の蛋白(VP7およびVP4)が存在し、抗原性の違いによってG血清型およびP遺伝子型を規定している。今回、奈良県で過去6年間に分離されたA群ロタウイルスについてG血清型およびP遺伝子型解析を行い、流行様式の多様性およびP遺伝子型解析からみた患者の年齢分布に興味ある知見を得たので概要を報告する。

検索対象は、奈良県内の定点医療機関で1999〜2004年の間に感染性胃腸炎と診断されラテックス凝集法でロタウイルス陽性と判定された患者便174例(1999年16例、2000年37例、2001年23例、2002年41例、2003年30例、2004年27例)を用いた。G血清型およびP遺伝子型解析は、RT-PCR法で行った。

G血清型およびP遺伝子型解析結果を年次別発生頻度として図1に示した。図1-AからG血清型別割合の推移をみると、1999〜2001年の間ではG1が圧倒的に優位で(1999年90%、2000年79%、2001年67%)、血清型も少数(2種)であったものが、2002年には4種(G1〜G4型)もの血清型が検出され、様相が一変した。その後、2003〜2004年にかけてはG3およびG4が優位(2003年G3:23%、G4:46%、2004年G3:80%、G4:7%)で、また血清型も2002年以降は多種検出される傾向が観察された。図1-BはP遺伝子型解析結果を年次別に示したもので、確認された遺伝子型はP[4]、P[8]およびP[9]型の3種であった。発生頻度からはP[8]型が圧倒的に優位であったが、年次ごとの変化に特徴的な傾向は観察されなかった。G血清型との組み合わせではP[8]型のウイルスはG1、G3、G4およびG9に分類され、P[4]型ウイルスはすべてG2であった。また、稀な組み合わせとして1例(1歳、男子)からP[9]G3型が検出された。このウイルスについてはクローニングののちVP7領域のシークエンスを行い、AU-1株(accession No.D86271)に高い相同性(アミノ酸97%、遺伝子配列93%)を有することを確認した。AU-1株はネコロタウイルスとの関連性が指摘されている1)ことから、患者家族への聞き取り調査を行ったが、生活環境下でのネコとの濃厚接触は経験しておらず、感染源の特定には至らなかった。

感染力にはウイルス表面のスパイク蛋白を形成するP抗原(VP4)が重要であると報告されている2)。そこで、P[8]型とP[4]型でそれぞれの患者年齢分布を比較した(図2)。前者のP[8]型ウイルスは、明らかなピークが0〜2歳に観察され、それらの占める割合は74%であるのに対し、後者のP[4]型は明瞭な好発年齢は観察されず、むしろ学童(7歳、11歳、13歳)を含む幅広い年齢層での患者がみられたことが特徴的であった。

以上のことから、G血清型は多種混合の流行を形成し、主たる血清型は数年を要して変化することが判明した。また、P[4]G2型ウイルスはロタウイルスの特徴の一つである0〜2歳の好発年齢が明瞭ではなく、学童にも感染することが明らかとなった。

本稿を終えるにあたり、検体収集にご協力いただいた定点医療機関の諸先生方に深謝いたします。

 文 献
1) Nakagomi T, et al., J Virol 63(3): 1431-1434, 1989
2) Clark SM, et al., J Virol 39(3): 816-822, 1981

奈良県保健環境研究センター 井上ゆみ子 北堀吉映

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