保育園で発生した腸管出血性大腸菌O26による集団感染事例−仙台市

(Vol.25 p 340-341)

2004年7月末〜8月にかけて仙台市内の1保育園において、園児・家族・職員に及ぶ腸管出血性大腸菌O26:H11集団感染が発生したので概要を報告する。

8月2日(月)に市内の医療機関から1歳の保育園男児1名のO26、VT1産生株による腸管出血性大腸菌感染症の発生届が保健所に提出された。その後、8月3日から保健所による保育園児の接触者調査が行われたところ、他の園児からもO26:H11(VT1産生)株が検出されたため、全保育園児と職員のO26検査が行われた。その結果、表1に示すように初発の園児1名を含む園児100名中14名、職員26名中2名からO26が検出された。さらに、菌陽性となった園児の家族の接触者調査も行われ、41名中7名からO26が検出された。また、保育園の給食についても調査が行われ、保存されていた13日間の食品212件(食材121件を含む)の検査を行ったが、O26は検出されなかった。ひととおりの検査は8月14日までに終了したが、O26陽性と判明した者の接触者の再調査が行われ、8月30日まで検査が継続した。

園児における発生状況をみると、陽性者14名のうち11名が同じ2歳児の組の園児であった。この組は園児18名中11名が陽性者、担任職員も1名陽性者であることから、高率にO26の感染が広まったことが推測された。

なお、表1に示すようにO26陽性となった14名の園児のうち有症状者は8名、無症状者は6名、発症率は57%(8/14)、職員では陽性者2名のうち有症状者1名、無症状者は1名で、発症率は50%(1/2)、家族では陽性者7名のうち有症状者はなし、発症率は0%(0/7)で、全発症率は39%(9/23)であった。これらのうち園児と家族の発症率に有意な差が認められた(p <0.05)。

菌陽性者より検出されたO26:H11(VT1産生)株のパスルフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行った結果の一部を図1に示す。レーン1と8の有症状の園児より分離された株、ならびにレーン2〜5に示す無症状の家族より分離された株のパターンは一致した(パターンA)。また、ここに示した以外でも2名の職員を除く陽性者全員より分離されたO26:H11(VT1産生)株は、パターンAと一致するパターンを示した(Dice法により90%以上の類似度)。これに対し、レーン6と7に示す2名の職員より分離された2株(パターンC、パターンB)は、パターンAとは数本のバンドが異なるパターンを示した(パターンAとパターンCは84%、パターンBは89%の類似度。パターンCとパターンBは91%の類似度。なお、レーン9のO26 対照株はパターンAとは83%の類似度であった)。

今回保育園関係者より分離されたO26:H11(VT1産生)株のPFGEパターンを、8月20日までに宮城県内で仙台市以外の地域より分離されていたO26:H11(VT1産生)株のPFGEパターンと比較したところ、パターンA株は仙台市近郊在住の男児より分離されたO26:H11(VT1産生)株と、パターンC株は県北部で発生した3事例より分離されたO26:H11(VT1産生)株とPFGEパターンが一致した。また、国立感染症研究所に依頼し全国のO26株と比較したPFGEの結果から、パターンB株は8月初旬に群馬県での散発事例由来株と一致したPFGEパターンであった。

仙台市衛生研究所
沼田 昇 星 俊信 高畑寿太郎 熊谷正憲 吉田菊喜
宮城県保健環境センター 谷津壽郎 秋山和夫

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