熊肉関連の旋毛虫症、2003年−米国・ニューヨーク州およびテネシー州

(Vol.25 p 342-342)

症例1:2003年12月、ニューヨーク州衛生部は54歳男性の旋毛虫症の報告を受けた。患者は11月上旬、3週間にわたる発汗、発熱、脱力、頻脈、下痢、3.6kgの体重減少、乾性咳嗽にて入院した。臨床検査で白血球増多、好酸球増多、低ナトリウム血症、LDH・CPK上昇が認められた。患者は州北部の屠畜場で熊肉を入手し、発症2週間前に、−20℃で約1週間保存された約1kgの熊肉をほとんど生で食べていた。アルベンダゾールとステロイド薬が投与され、2004年2月に全快した。CDCで実施したELISAでは、入院11日目の血清で抗旋毛虫抗体が陽性であった。冷蔵庫から回収した熊肉から旋毛虫幼虫が 0.5〜48個/g検出され、PCRによりTrichinella nativa と同定された。

症例2および3:2003年11月、テネシー州衛生部は38歳男性および54歳女性の旋毛虫症例の報告を受けた。患者は10月初旬、1〜2週間の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛および顔面の腫脹を呈して入院した。ともに白血球増多、好酸球増多を認めた。両者の血清で抗旋毛虫抗体が検出され、アルベンダゾール、ステロイド薬の投与にて全快した。両名は、カナダで狩猟して保存していたアメリカクロクマ肉のステーキをミディアムレアで食べていた。熊肉の横紋筋組織からは、旋毛虫幼虫が350〜400個/g回収された。PCRで遺伝子型はT. nativa に一致した。

旋毛虫症は古典的には、感染した家畜豚肉喫食に関連するが、米国では豚飼育工程の改善により、症例数は着実に減少した。1997〜2001年にCDCに72例(年間11〜23例)が報告されたが、その多くは野生猟獣(主に熊)であった。旋毛虫症予防には肉(特に野生猟獣の肉)は、内部温度が71℃になるまで加熱調理するべきである。

(CDC, MMWR, 53, No.27, 606-610, 2004)

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