スッポンによるサルモネラ食中毒事例−秋田市

(Vol.25 p 261-261)

2004年6月、秋田市でスッポン料理が原因とされるサルモネラ食中毒において、患者便とスッポンから検出されたSalmonella Typhimuriumのパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンが一致した事例を報告する。

探知:6月14日午後、市民から職場同僚複数名が食中毒様症状を呈し医療機関を受診したとの連絡があった。

患者発生状況:患者らは6月5日から吐き気、発熱、下痢、腹痛等の症状を呈していた。摂食者28名のうち有症者は10名であり、8名の糞便検査の結果、2名からSalmonella Montevideo、1名からS . Typhimuriumが検出された。

摂食調査結果:共通食は6月4日の飲食店での宴会料理のみで、有症者の共通食はスッポンの血、フグ刺であり、またスッポンの肝臓、心臓、胆嚢、肩肉のいずれかを生で摂食していた。当日、同施設利用客のうち、このグループのみにスッポンが提供されていた。

原因調査および結果:6月16日に従事者便7検体、ふきとり10検体、原因施設残品の同一ロットの生体スッポン1検体の検査を行った。従事者便、ふきとり検査の結果は、サルモネラ属菌を含む食中毒菌は陰性だったが、包丁(使用前)および洗い場シンク蛇口のふきとり検査において一般細菌数が 1.0×106 個/ml以上と汚染されていた。またスッポンは肩肉、血液と、内臓を腎臓、脾臓、肝臓、心臓、腸管、肺、胆嚢に分けそれぞれ検査を行った。検査法はBPWとTT培地で二次増菌培養を行いSS寒天培地で分離した。その結果、腸管の検体から硫化水素産生菌10コロニーが認められ、そのうち3コロニーがサルモネラであり、血清型はすべてS . Typhimuriumであった。さらに患者便と腸管から検出されたS . TyphimuriumのPFGEパターンが一致した。

考察:これらの結果から、発生要因は施設での食品の取り扱いの不備により、スッポンを調理した際の腸管中のサルモネラ属菌が、生食用に提供された内臓等を汚染したものと推定された。また患者便から検出された血清型が2種類であったことから、スッポンは複数の血清型のサルモネラを保菌していることが考えられた。

流通調査:同一ロットのスッポンは秋田県内3カ所に流通しており、原因施設に7匹、A飲食店に2匹、B飲食店に4匹の合計13匹であった。原因施設では6月4日に6匹をスッポン鍋の他、血と肝臓、胆嚢、心臓、肩肉を生で提供し、残品1匹については本市で検査を行った。A飲食店では6月20日に血と鍋料理として提供したが発症者はいなかった。B飲食店では6月10日に1匹を鍋料理とし提供、1匹は死亡したため廃棄、残り2匹は6月21日本市からの情報提供により、加熱調理で提供することでその後有症苦情はなかった。

秋田市保健所・衛生検査課 菊地いち子 塩谷真紀子 鐙屋公雄

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