インフルエンザ非流行期におけるB型およびAH1型ウイルスの分離−沖縄県

(Vol.25 p 237-237)

インフルエンザ非流行期の2004年7月末に患者1名からB型インフルエンザウイルスが分離され、さらに8月上旬にはフィリピンへ渡航した2名の患者からAH1型ウイルスが分離されたので報告する。

B型分離例:患者は、男性(56歳)で渡航歴はなく、2004(平成16)年7月26日に発症し、7月28日に医療機関を受診した。主な症状は38℃台の発熱、関節痛、筋肉痛および腹痛を伴う胃腸炎で、急性上気道炎および胃腸炎と診断された。7月30日に咽頭ぬぐい液が搬入され、接種3日目にMDCK細胞にCPEが確認された。培養上清について、国立感染症研究所からシーズン前に配布されたインフルエンザウイルス抗血清を用いてHI試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を行った結果、抗A/Moscow/13/98(ホモ価 1,280)、抗A/New Caledonia/20/99 (ホモ価 320)、抗A/Panama/2007/99(ホモ価 1,280)、抗A/Kumamoto(熊本)/102/2002 (ホモ価 160)および抗B/Shandong(山東)/7/97 (ホモ価40)ではいずれもHI価<10であったが、抗B/Johannesburg/5/99 (ホモ価 640)に対してはHI価 640を示したことから、山形系統のB型インフルエンザウイルスと同定した。

沖縄県における2003/04シーズンのB型はビクトリア系統のウイルスのみが分離されており(http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr2953.html参照)、山形系統は今年初めての分離であった。

AH1型分離例:患者2名は、母(37歳)と子(8歳)で、2004(平成16)年7月26日〜8月2日までフィリピンを旅行していた。両者とも発病日は8月5日で、主な症状は発熱、関節痛、筋肉痛および上気道炎であった。8月6日に咽頭ぬぐい液が搬入され、接種3日目にMDCK細胞にCPEが確認された。培養上清について上記抗血清を用いてHI試験を行った結果、抗A/Moscow/13/98(ホモ価 1,280)、抗A/Panama/2007/99(ホモ価 1,280)、抗A/Kumamoto(熊本)/102/2002 (ホモ価 160)、抗B/Shandong(山東)/7/97 (ホモ価40)および抗B/Johannesburg/5/99 (ホモ価 640)に対してはいずれもHI価<10であったが、抗A/New Caledonia/20/99 (ホモ価 320)に対してはHI価80〜160を示したことから、AH1型のインフルエンザウイルスと同定した。

2003/04シーズン、国内でのAH1型分離は長野県から1例1)、埼玉県から2例報告があるのみで極めて少ないことや、この時期に沖縄県でA型インフルエンザの発生報告がないことから、渡航先で感染した可能性が強いと考えられた。

近年、非流行期における渡航歴のある患者からのインフルエンザウイルス分離の報告2-6)は増えており、特に東南アジアへの渡航者に多い傾向がみられる。この時期の海外旅行者への注意喚起と、インフルエンザウイルス動向の把握は重要である。

文 献
1)病原微生物検出情報, Vol.25, 36-37, 2004
2)病原微生物検出情報, Vol.24, 258, 2003
3)病原微生物検出情報, Vol.24, 258-259, 2003
4)病原微生物検出情報, Vol.24, 259, 2003
5)病原微生物検出情報, Vol.24, 259-260, 2003
6)病原微生物検出情報, Vol.24, 324, 2003

沖縄県衛生環境研究所・衛生科学部微生物室
平良勝也 糸数清正 中村正治 久高 潤 安里龍二

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