長野県における性器クラミジア検査の経過

(Vol.25 p 202-203)

長野県では性感染症相談・検査事業の一環として、2000(平成12)年7月から性器クラミジア検査を実施している。対象者は県内10保健所(長野市保健所を除く)へエイズ相談に訪れた人のうちの希望者であり、無料匿名で検査を受け付けている。検査方法は、事業開始当初は抗体検査(血清IgGおよびIgA)を用いていたが、より正確な感染の状況把握をめざして、2002(平成14)年5月からクラミジア核酸増幅検査(女性は主として自己採取の膣分泌物、男性は初尿)に変更した。

検体は保健所で受け付け後、当所へ搬入される。当所では週2回の前処理および週1回の測定サイクルで検査を行っている。尿は採取後4日以内、膣分泌物は10日以内に前処理をする必要があるため、各保健所へは検体の採取日や発送日に特に注意をするようお願いをしている。

事業開始から2003(平成15)年度までの検体数および陽性数(率)は表1表2のとおりである。過去の感染も反映する抗体検査の陽性率と核酸増幅検査の陽性率との単純な比較はできない。しかし、2001(平成13)年度を除き年間約300件前後で一定していることから、抗体陽性率(平均29%)と核酸増幅検査陽性率(平均8.4%)の差が過去の既往を示していると考えられる。核酸増幅検査を検体種別でみると、尿は膣分泌物と比較して陽性率が低い。これは尿の場合は抗原濃度が低いことや、初尿の条件(最後の排尿から2時間以上経過していること)を満たしているかによって検出率が低下することが関係していると考えられる。したがって女性の場合に確実な結果を求めるのであれば、尿より膣分泌物を用いた検査を推奨すべきである。

長野県の定点あたりの性器クラミジア報告数は年々増加している。2002年は1998(平成10)年の2.5倍の報告数であり、この年に初めて全国の平均以上の報告となった。年齢別では15歳〜24歳の増加率が特に高い。さらに1999(平成11)年まで報告のなかった10歳〜14歳の報告が2000年から始まり、それ以後もわずかながらも増加している。このように長野県でも全国と同様に若年層の感染が増加している。これらの対策として長野県では若年層(中高生)向けの講座を設けるとともに、相談・検査事業の周知等に努力している。また、毎年7月上旬にはエイズ予防ウィークin Naganoを設けてエイズおよび性感染症に対する啓発を行っている。しかし現在、性器クラミジア検査はHIV検査のオプション検査といった傾向であり、性器クラミジアに対する認識が深まるような啓発が今後も特に必要であると考えられる。

 長野県環境保全研究所・保健衛生チーム   中村友香 粕尾しず子 徳竹由美 小林正人 和田啓子

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