バングラデシュ、インドネシアおよび他のアジア諸国におけるインフルエンザ菌b型(Hib)疾患の影響(burden)に関する専門家会議


(Vol.25 p 186-186)

2004年1月28日〜29日にバンコクで開催された専門家会議では、アジア諸国でのインフルエンザb型菌(Hib)疾患の影響(burden)についての研究の評価を行ったが、特に、バングラデシュとインドネシアから提出されたワクチンの有効性に関する2件の研究の評価を行った。中国、インド、韓国、タイ、ベトナムではWHOの指針に基づき、国際機関と各国の当局との協同で全人口を対象とした研究が行われたが、すべての場合で、検査室診断されたHib髄膜炎の発生率は、5歳未満の小児10万人当たり10例未満であった。

しかし、インドでは入院例で腰椎穿刺が行われなかった例や、入院することなく死亡している例が一定数あることが示され、さらにブータン、モルジブ、ネパール、タイでの“迅速評価”においても、Hib疾患の発生率を過小評価していることが示唆された。

バングラデシュのダッカでは、Hibワクチンの効果を検討するための症例対照研究が行われた。血液培養で確認されたHib肺炎は8例のみであったが、画像診断で肺炎とされた症例は343〜672例に上った。Hibワクチンの3回接種により、画像診断での肺炎の発生は15〜45%減少した。これは、血液培養での確定例数よりも、8〜20倍の肺炎の発生が予防可能であることを示唆している。

インドネシアのロンボクでは、地域社会ベースの研究(vaccine probe study)が行われた。11週〜2歳までの小児10万人についてみると、ワクチン非接種群での検査室診断されたHib髄膜炎は19例であったが、臨床診断からみてHibワクチン接種により予防できた髄膜炎症例は、47〜156例であった。

専門家会議は、Hib疾患の真の発生率をより明らかにするためにアジア諸国を支援する目的で、いくつかの提言を行った。バングラデシュの症例対照研究では、全人口を対象とした臨床的な髄膜炎、および肺炎の発生率のデータと結び付けて、Hib髄膜炎および肺炎の発生率を推計する必要がある。インドネシアに関しては、ロンボク以外の地域で化膿性髄膜炎の発生率に関する小規模な研究を行うことで、ロンボクのデータを補ってHib髄膜炎の発生率を推計する必要がある。

アジアでのHib感染症の影響を評価するには4つの手法があり、それらは、1)“迅速評価”、2)全人口を対象とするHib髄膜炎確定例のサーベイランス、3)ワクチン効果に関する症例対照研究、4)“vaccine probe study”である。いずれも長短はあるが、専門家会議としては経費や症例定義の難しさを考慮しても、“vaccine probe study”をインドで推進し、加えてアジアのもう1カ所で実施する必要があると考えている。

(WHO, WER, 79, No.18, 173-175, 2004)

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