2003年に広域において見出された同一PFGEタイプを示す腸管出血性大腸菌O157

(Vol.25 p 141-141)

2003年に日本各地の地方衛生研究所等で分離された腸管出血性大腸菌(EHEC)分離菌株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子型別を中心とした解析を行った。2003年分離株で国立感染症研究所・細菌第一部に送付され、解析を行ったO157株は1,224株であった。

2001年にほぼ全都府県で分離された同一PFGEタイプのO157と同じPFGEタイプ(types A, B, C)(本月報Vol.23, 137-138 & Vol.24, 129-130)を示す株が、2002年に引き続き、2003年も16道府県で分離された。2003年におけるこれらの株の分離比率は、2002年の11%からさらに減少し、約6%となった。これらの株には福祉施設における集団発生由来株も含まれるが、ほとんどが散発事例由来株であり、食材等の原因についてはすべて不明であった。

一方、types A, B, Cとは異なるPFGEタイプで、広域において分離されているO157:H7/- (stx 1+stx 2陽性株)は、少なくとも7種類のPFGEタイプが見出された()。これらの株においても、ほとんどが散発事例由来株であるが、保育園や飲食店における集団発生由来株も含まれていた。

以上のごとく、広域に及ぶ同一PFGEタイプのO157:H7/-による事例が発生していることが判明したものの、原因が明らかになった事例はなく、今後の事例発生の早期探知による拡大予防とともに、原因究明に向けた対策の必要性が示唆された。

既に2004年も、4月初旬〜中旬にかけて石川県、福井県、岡山県、香川県において同一PFGEタイプを示すO157:H7 (stx 2陽性株)による散発事例が多発しており、本年もO157の動向について十分な注意が必要であろう。

国立感染症研究所細菌第一部
寺嶋 淳 泉谷秀昌 伊豫田 淳 三戸部治郎 田村和満 渡辺治雄

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