小学校におけるSalmonella Enteritidis食中毒事例−福井県

(Vol.25 p 79-80)

2003(平成15)年11月6日、S市教育委員会からT健康福祉センターに、下痢、腹痛および発熱の症状のあるK小学校2年生の2名からサルモネラが検出されたとの連絡があった。調査の結果、小学校では10月27日に2年生がおまつり会と称して、1年生、教職員および保護者を招待し、一口サイズのホットケーキとウインナーを調理し提供していることが判明した(ただし、2年生はホットケーキは食べていない)。喫食者数は1年生46名、2年生47名、教職員23名および保護者42名の計 158名で、有症者は1年生2名および2年生7名の計9名であった。

そこで、11月8日から衛生環境研究センターが2年生を、民間の衛生検査所が1年生を主に担当し糞便検査を実施したところ、2年生13名および1年生1名からSalmonella Enteritidis(S . E)が検出された(表1)。このうち1名は発端となった2名のうちの1名と同一人物であり、15名(のべ16名)から検出されたことになる。なお、衛生環境研究センターで検出された13検体中6検体は増菌培養のみからの検出であった(表2)(衛生検査所では直接培養のみ実施)。27日に欠席した2年生の1人からもS . Eが検出されたことから、再度調査したところ、24日に本番前の練習として2年生全員がホットケーキとウインナーを喫食していること、および27日に欠席したその児童が26日に発症していることが判明し、有症者は合計10名となった。15名から分離されたS . Eについてパルスフィールド・ゲル電気泳動を実施したところ、Xba I処理では15株すべてが同一パターンを示し、Bln I処理では1株で1本のbandの欠落があるものの、それ以外はすべて同一のパターンを示した。なお、4月〜10月までの散発下痢症患者由来のS . E 29株のうち、これと同じパターンを示したのは2株あったが、発症時期は異なっていた。また、ファージ型別は国立感染症研究所に検査を依頼した結果、15株すべてが1型であった。

食品の残品がなく原因追及のための検査はできなかった。S . Eによる食中毒の多くは卵を原因としており、本事例においてもホットケーキの材料として卵が使用されていた。材料の卵は、いずれも23日に購入したものを24日は3個、27日は2個使用していたことから、これが直接的な原因食材の可能性が高いと考えられる。したがって、1、2年生ともホットケーキが原因食品と考えられた。ただし、2年生の一部については、27日の調理時のまな板の共用によるウインナーへの二次汚染によって感染した可能性も否定できない。

原因食品の喫食日を特定することはできなかったが、1年生の有症者2名の潜伏期間は39.3時間(14〜65.5時間)であった。この他、11月10日に採取した2年生の検体からS . Eが検出されたことから、喫食後14〜17日目でも保菌していたことが明らかとなった。

福井県衛生環境研究センター 石畝 史 前田央子 京田芳人 堀川武夫
福井県丹南健康福祉センター 高橋伸行 笹本雄一 盛戸正人 中川友二郎

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