ワクチンの安全性に関する国際委員会、2003年12月3日〜4日


(Vol.25 p 46-47)

2003年12月3日〜4日にジュネーブで、1999年に設立されたワクチンの安全性に関する国際委員会の第9回会議が開かれ、以下の項目が討議された。

経鼻生インフルエンザワクチン:米国では 500万本以上のワクチンが製造され、2003年の11月までに40万本が供給された。2004年6月の会議で、認可後のワクチンの安全性に関する詳細が発表される予定である。 インフルエンザワクチンと神経合併症:米国のワクチンの安全性に関する委員会は、不活化ワクチン(特に1976年)とギランバレー症候群、多発性硬化症、視神経炎、生後6〜23カ月の脱髄性神経疾患などの神経合併症との関係を報告した。これらの因果関係は不明であり、1976年の不活化ワクチンがCampylobacter jejuni に汚染されていたかどうかの検討を行うことが望まれる。

妊娠女性に対するインフルエンザワクチン:妊娠中、特に第1三半期の女性に対する不活化ワクチンの接種を提言することについて議論された。第1三半期でのインフルエンザワクチンの使用に関する資料は少ないが、破傷風のような他の不活化ワクチンでは安全性が証明されている。インフルエンザ罹患により、妊娠女性の死亡、入院、死産の危険性が高いことは認識されている。全妊娠期での妊婦への接種による利益と危険性については、再度議論されるべきである。

ポリオ根絶計画における安全性の問題:6カ国(高度流行地域5カ所を有する3カ国を含む)でのポリオ根絶に向けての活動が報告された。また、ポリオ2型ウイルス(MEF-1株)感染の7例は、おそらく製造後にポリオワクチンが汚染された結果によるものと報告された。ポリオ根絶を確認するための条件、根絶後の経口ポリオワクチン廃止の是非なども討議された。

ムンプスウイルスに関する地域の核となる研究施設:ムンプスワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生には、ワクチン株の接着因子蛋白に関係する遺伝子の点変異が関係している可能性があり、さらなる調査が行われるべきである。野生株とワクチン株とを正確に鑑別するために、地域の核となる研究施設を設立するべきである。

黄熱ワクチン:黄熱ワクチン接種後の内臓病変が米国などで報告されている。近年の知見ではワクチン株によるものであり、ワクチン株が野生株へ逆変異したものではない。米国では神経病変での死亡はない。内臓型病変を生じた患者のすべては、初回接種の2〜5日後に発症している。

内臓病変発症の危険因子は65歳以上の高齢者で、神経病変の危険因子も高齢者の接種であった。黄熱ワクチンの2つの重篤な合併症の予後因子や危険性についての検証が必要である。

HIV感染者に対する黄熱ワクチン接種についての問題は解決されていない。HIV感染が抗体獲得に与える影響、神経系ヘの侵入や脳症のリスクに与える影響については、結論が出てない。

HIV陽性者のBCG接種:HIV陽性の乳幼児における、BCG接種による重症結核感染症の予防に関するデータはほとんどないので、結核の流行地ではHIV陽性、陰性にかかわらず、乳幼児のBCG接種に関する効果と安全性の検証を行うべきである。

痘そうワクチン接種の安全性:2003年1月に米国で、医療関係者の65%をカバーし、38,759人に接種を行った。妊娠前あるいは妊娠中に痘そうワクチンを接種してしまった女性 160人が登録されている。副反応として、心筋心膜炎や拡張型心筋症が報告されたが、それらの頻度は偶然に起きたとするには高すぎるものである。

風しん単味ワクチンから麻しん・風しん・おたふくかぜ混合(MMR)ワクチンへの移行:数カ国で風しん単味ワクチンが入手不可能となっている。風しん抗体陰性である出産後の女性に対し、風しんを含む混合ワクチンの接種を制限すべき根拠は知られていない。

アルミニウム含有ワクチンと筋膜炎:過去の接種部位でのアルミニウム含有マクロファージの存在が、特異的な臨床症状や疾患と関係しないと結論された。

B型肝炎ワクチンと多発性硬化症、B型肝炎ワクチンと白血病に関しての事柄は、本委員会のウエブサイト(http://www.who.int/vaccine_safety/en)で閲覧可能である。

(WHO, WER, 79, No.3, 16-20, 2004)

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