東京都における輸入デング熱患者の発生

(Vol.25 p 30-31)

近年、デングウイルス感染症の患者数は世界各地で急激に増加したことから、再興感染症として注目されている。

わが国では、1999年4月「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が施行され、その中でデング熱・デング出血熱は「4類感染症・全数届け出疾患」に制定された。しかし、現在日本国内にはデングウイルスは常在しておらず、従って国内の感染例はない。わが国の患者発生報告は、デングウイルス感染症流行地域からの帰国者すなわち輸入感染症に限られる。ここでは、感染症法が施行されてから当センターで検査を実施した概要について報告する。

最近5年間に、当センターで検査を行ったデング熱およびデング熱疑い患者数、および検査結果を表1に示した。

1999年4月以降、当センターに搬入された患者96名の血液115例からPCR法による遺伝子検出およびIgM抗体検査により42名がデング熱と確定された。PCR法でデングウイルス遺伝子が検出されたものは7例で、その内訳は、1型5例、2型1例、3型1例で、年次別では、2000年はデング1型・2型各1例、2001年と2002年はデング1型各1例、2003年はデング1型2例、3型1例であった。また、他の35例はいずれもIgM抗体陽性となったものである。デングウイルス感染者と確定された42名の患者の発病時期は、各月2〜6例と季節による大きな変動はなかった。

デングウイルス感染者と確定した患者42名の海外渡航先を図1に示した。一番多かった渡航先はタイ(14名)で、次いでインドネシア(11名)、フィリピン(4名)の順であった。特に、2002年度は確定患者17名中10名がタイからの帰国者であった。

デング熱は突然の発熱で発症し、頭痛、眼窩痛、関節痛・筋肉痛、消化器症状(腹痛、嘔気・嘔吐)、呼吸器症状(咳嗽、咽頭痛、鼻炎)、結膜充血、眼瞼腫脹等を伴うが症状自体は非特異的である。今回、デングウイルス感染が確認された患者42名の臨床症状を図2に示した。

発熱を呈したものは42名中40名(95%)で、特に39℃以上の発熱を呈したものが34名(81%)であった。次に発疹を呈した患者は28名(67%)で、解熱時に四肢に強い点状発疹や紅斑・丘疹が現れた例が多かった。

デングウイルス感染が確認され検体採取の行われた病日を図3に示した。PCR法で確認されたものは3〜6病日に、IgM抗体が陽性となった検体は4日以降18病日までのものであった。このうち、2003年度にはタイへの渡航歴がある患者の6病日の血清から遺伝子検出(1型)とIgM抗体が同時に検出された。2001年度には、タイへの渡航歴がある3病日の患者血清から遺伝子(1型)が、8病日の血清からIgM抗体が検出されている。また、ラオスから帰国した患者の3病日の血清は遺伝子検査は陰性であったが、12病日に採取された血清からIgM抗体が検出された。

2000年度には、メキシコ・グアテマラに渡航歴があるデング熱疑い患者血清1例からはデングウイルスIgM抗体は陰性であったが、紅斑熱リケッチアIgM抗体が検出された。

東京都健康安全研究センター 吉田靖子 田部井由紀子 村田以和夫

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